院長ブログ

侵入者

2019.08.23

ハエの幼虫である『ウジ』には、動物の皮膚に住み生きていくものがいます。
この「ウジ」が、動物の皮膚を食い破って体内に侵入してしまったものを『ハエウジ症』と言います。

皮膚を食い破ると、その部分から体液が出てジクジクします。
ウジは頭をジクジクした中に突っ込み栄養分を吸い取り、お尻をジクジクした部分の外に出して息をしています。
この呼吸をするために開いてる穴を『気門』と言います。
気門は動物で言えば鼻の穴みたいなものですが、本当に鼻の中のように見えます。

連れてこられたハエウジ症の子は、まだ体重が120グラムしかない子猫です。
しかも、片方の耳の中にウジがひしめき合っていました。
皮膚じゃなく耳の中ですよ、、いやぁ〜診た瞬間にゾクッとしました。
ウジが寄生してない方の耳の中をチェックしてみると、耳の中の皮膚は分厚く腫れ感染もしており、多少ジクジク気味でした。

治療はいたって単純!
ピンセットを使って、一匹ずつ取り出していきます。
しかしウジの体にピンセットが触れた瞬間、逃げ耳の奥へ潜っていってしまうのです。

そこでウジを酸欠にして退治する、治療方法をとります。
ウジは空気を吸う虫ですから、『気門』から空気を吸い込めないようにします。
そうすると苦しさから空気を求めて、耳の奥から這いず出てくるのです。
出てきたウジを、ピンセットで捕獲!
ま〜時間のかかる処置ですが、確実に駆除できます。

ハエウジ症は、一般的には健康な子には起こらない病気です。
それに対して、全身状態の弱った子には寄生が見られます。
病気や老齢で寝たきり、床ずれができてしまってる、怪我で傷してる、皮膚炎、ウンチやオシッコで汚れてるなどで発症しやすいと言われています。
しかし、ときたま傷のない皮膚からでも侵入するウジもいます。

ちなみ、ウジを使った治療方法に『マゴットセラピー』というものがあります。
これは治療用に繁殖させた「ウジ」を使う治療方法です。

治療用のウジは腐った組織を食べ、しかもウジが分泌する抗菌物質は薬剤耐性菌などの病原菌をも殺してしまうため傷が治りやすくなります。
この治療方法は、麻酔も使うことなく副作用もほとんどなく潰瘍の状態を改善させます。
ちなみこの治療用のウジ、日本じゃ超〜高価だそうです!!

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