院長ブログ

ジクジク

2019.05.27

「一年以上も前から、お腹がジクジクしてるんです。」
そんなことで、いらっしゃった方が‥‥

お腹を診ると穴が二つ開いている。
しかもお腹の真ん中!手術の痕もある。
飼い主さんの話じゃ、乳がんと子宮の手術したそうです。
皮膚を縫った糸を除去、いわゆる抜糸して間も無くジクジクが始まったそうです。

ジクジクの部分を良〜く診ると、そこに何かがあります。
触ると、かすかに指先に触れるモノです。

そこでジクジクなっている部分を探査してみると、そこにあったのは『糸』!
それは、筋肉や腹膜を縫った糸であろうと思われます。
そこで、痛く無いように糸を除去です。
二か所とも、同じように『糸』が出てきました。

取り出した糸を、飼い主さんに見せると
「抜糸できない場所は、溶ける糸を使ってると聞きました!」とのことです。

手術は1年以上も前のことだし、普通なら溶けてしまってるはずの糸が溶けていない‥‥
触診すると、まだ皮膚の下には糸が結構残っているようです。
溶ける糸でも、こんなに溶けるのに時間がかかることもあるんですね〜

手術用の糸には、いろいろな種類があります。
素材による分類
・絹糸などの『天然素材の糸』
・『合成繊維の糸』
生体内での変化による分類
・組織に吸収されない『非吸収糸』
・組織に吸収される『吸収糸』
形状からの分類
・1本の単糸でできている『モノフィラメント』
・何本かの糸を束ねて編み込んだ『ブレイド』

ここでは胃腸や膀胱などお腹の中や筋肉などを縫うときは、モノフィラメントの合成吸収糸を使っています。

一般的な使い方としては、だいたい以下のようです。
感染のリスクがある部位ではモノフィラメントを
確実な結紮が必要なときはブレイドを
胃腸や膀胱など治癒の早い組織は吸収糸を
皮膚や腱などの治癒の遅い組織では非吸収糸を

来院したワンちゃんの傷、早く治ることを祈ってます!

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