【股関節形成不全症】犬の股関節形成不全症とは?症状や治療法を解説
2021.12.07
腰を左右に振りながら歩く。
走る時はウサギのように両後ろ足をそろえ、ピョンピョンと跳ねるような動きをする病気が「股関節形成不全症」です。
これらの症状は、後ろから見ると良くわかります!
レントゲン検査してみようね。
股関節の形がなんか変ですね。
股関節形成不全症とは、股関節の部分の骨が変形することによって起こる病気です。
大型犬や超大型犬に多い病気ですが、小型犬や猫にも発症がすることもあります。
ただ小型犬の股関節形成不全は症状はハッキリせず、見つけ出すのも診断も難しいとされています。
また猫では、発症する要因が少ないとも言われています。
ここでは『犬の股関節形成不全症』の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。
もくじ
股関節形成不全症はどんな症状?
股関節は、後ろ肢にあたる「大腿骨(だいたいこつ)」の『凸』である「大腿骨骨頭(だいたいこつこっとう)」が、骨盤の「寛骨臼(かんこつきゅう)」という『凹み』に組み合わさり出来ている、足と体幹を連結させている関節です。
この「凹凸」はピッタリと組み合わさっているため、滑らかに動くことができます。
しかし寛骨臼と大腿骨頭の「凹凸」がうまく噛み合わなくなると、関節に炎症を起こしてしまいます。
そしてしだいに股関節形成不全症へとなり、発症してしまいます。
股関節形成不全症の症状は、関節の状態により異なります。
しかも発症初期では、関節の異常にあまり気がつかないこともあります。
しかし徐々に症状が進行するにつれ、徐々に痛みがでてきます。
その結果、痛みや噛み合わせの不都合から様々な症状が見られるようになってきます。
見た目に変化が見られる
股関節形成不全症での、見た目の大きな特徴的な症状は「腰のふらつき」です。
歩き方に、気を付けて見ていれば異常が割と早く見つかります。
これらの症状の多くは、徐々に進行していきます。
見た目や動きの変化には、以下のようなものがあります。
- 散歩を喜ばない
- 足腰に触れられるのを嫌がる
- 散歩の途中に座り込んでしまう
- 座るときに横座りをする
- 頭を下向きにして歩く
動きに変化が見られる
動きでの特徴的な症状は、早歩きや走る時にウサギのように両後ろ足をピョンピョンと同時に蹴ることです。
以下が動きの症状ですが、これらの症状も徐々に進行していきます。
- 歩く時に腰が左右に揺れる(モンローウォーク)
- フラフラと不自然な歩き方をする
- 後ろ肢の動きが不自由そうに見える
- 走りたがらない
- 段差や階段を上るのを嫌がる
- 頭を下向きにして歩く
- 走る時はウサギ跳びのようにする
股関節形成不全症の症状は、股関節の変形により引き起こされる症状です。
多くの犬では『大人しく、静かで、よく寝てる!』ことが多くなります。
そのため股関節形成不全症と診断するためにも、病状をしっかりと見極める必要があります。
~Dr.Nyan ポイント~
モンローウォークとは?
モンローウォークとは
アメリカの女優であった「マリリン・モンロー」が
映画の中で見せた『腰を大きく左右に振る歩き方』
だから・・・
それに似たような歩き方をするのを『モンローウォーク』って言うんです!
【参考記事】歩き方チェックが書いてあるDr.Nyanのブログ
股関節形成不全症の原因は?
若い時期に発症する股関節形成不全症は、股関節の緩みが原因となっています。
この関節の緩みから股関節の周りの組織に炎症を起こし、痛みを出してしまいます。
遺伝的な要因
股関節形成不全の因子を持つ親犬から生まれた仔犬には、一定の割合で股関節形成不全症が発生します。
つまり股関節形成不全症は、 遺伝する病気と言うことになります。
環境的な要因
- 食生活の偏りや肥満
- 成長期の激しい運動
- 関節に負担のある運動
が原因になることもあります。
大型犬は成長が早いため、成長期は骨と筋肉の成長にアンバランスを生みます。
その結果、関節が不安定になり関節炎を起こす場合があります。
関節の不安定な状態な上に、体重の増加などの肉体的な要因は関節炎を生じさせます。
またさらに運動や滑る床等の環境的な要因が加わると、関節炎は悪化してしまいます。
その結果、骨が変形し股関節までもが影響を受けてしまいます。
股関節形成不全症の内科的治療法と費用
治療を進める前に、問診や触診、歩き方の確認、レントゲン検査などを行います。
若い犬の場合では、レントゲン検査では明らかな骨の異常がが見られない場合もあります。
治療方法には、「内科的治療」と「外科的治療」があります。
どちらの治療も普通の日常生活が出来るように、また生活の質(QOL)の向上をめざして行います。
抗炎症剤や鎮痛剤を投与する
股関節形成不全症になると痛みから、様々な障害がでてきます。
そのため痛み止めの薬を使い、運動機能の改善、そして生活の質の向上をはかります。
痛み止めの薬を使うと、まるで 病気が治ったかのように見えます。
これは病気が治ったのではなく見かけ上良くなったように見えるだけですので、注意が必要です。
サプリメントを使う
グルコサミン・コンドロイチンなどのサプリメントで、関節痛への効果をうたったものを使用します。
その効果については様々ですので、使用に際しては先生と相談して下さいね!
体重の管理を行う
股関節にかかる負担を軽くするため、体重の管理を行います。
太っている場合には、減量を試みます。
痩せてい場合には、腰回りの筋肉を付けるような運動を行います。
また腰に負担がかからないように、滑らない床にするなど生活環境を整える必要もあります。
温熱療法やレーザー療法などの理学療法を行う
理学療法の目的は、運動機能の回復です。
温熱療法やレーザー療法で関節部分を温めることで、血行の改善と筋肉や関節が柔らかくなり動きやすくなります。
また温灸なども同じような効果があります。
リハビリやマッサージなどの運動療法を行う
マッサージは血液の流れを良くし、筋肉の緊張や代謝を改善することができます。
また腰回りの筋肉を育て、股関節の揺れを抑え、痛みが出ないようにします。
治ったわけでは無いのでケアを続ける必要がありますよ!
内科的な治療法を行った場合の費用
治療方法や治療内容、また使用する薬や体重などの違いから治療費が変わります。
しかし重度の痛みなどがある場合には、その分治療費もかかってしまいます。
先生と相談して、治療の方法を検討して下さいね!
股関節形成不全症の外科的治療法と費用
内科的療法で十分な治療効果が得られない場合は、外科的療法が選ばれます。
手術を行う外科療法は、単に痛みを和らげるだけではありません。
足の運動機能を改善し、生活の質(QOL)の向上と「スムーズに動ける体」を取り戻すことができるようになります。
手術を行うに場合には、手術の時期と手術方法を選ぶことが重要となります。
外科的治療には、以下の二つの方法あります。
- 予防的治療方法
- 救済的治療方法
予防的治療方法を行う
骨盤の骨を切って、寛骨臼と大腿骨頭の接し方を改善する方法です。
この手術方法は股関節には触りませんので、股関節はそのままです。
また、この手術は股関節に「変形性関節症」が見られない場合に行います。
変形性関節症とは!
関節を構成する骨と骨の間にある軟骨がすり減ったり痛んだりして、関節に腫れや痛みが出るとともに関節が変形してしまう病気です。
救済的治療方法を行う
股関節を手術しますが、その方法には二つあります。
その一つは傷んだ関節を人工器具に置き換える、つまり人工関節にする方法です。
この方法は、機能の回復が早いことが特徴です。
人工関節による外科的治療を希望される場合には、専門病院を紹介しています。
二つ目は、大腿骨の傷んだ関節を切除する方法(大腿骨頭切除術)です。
擦れている部分が無くなるため、痛みを減らすことができます。
この手術方法は、大型犬から小型犬、また猫でも対応することができます。
この手術方法の特徴は、上記の手術方法に比べて手術時間が短いことです。
これは手術を受ける側からして、体への影響が少ないと言えます。
しかし手術後に、機能が回復するのに時間がかかってしまいます。
そのため、早い段階から積極的なリハビリを行う事がとても重要になります。
股関節形成不全症の外科的治療法と費用
人工関節による外科的治療を希望される場合には、専門病院を紹介しています。
人工関節を入れるにしても、いくつかの手術方法がありますので費用はその病院の先生に相談しましょう。
大腿骨頭切除術の場合、20万〜30万円位かかります。
股関節形成不全症の予防方法
股関節形成不全症の発症には遺伝的な要因も関係することもあるため、完全に防ぐ予防方法はありません。
早期発見のため健康診断をする
股関節形成不全症の初期症状は気づきにくく、また少し病状が進んでも分かりやすい症状が現れるとも限りません。
そのため定期的な健康診断を行うことが、予防にもつながります。
動きや皮膚の状態をチェックする
日頃から、犬の行動や歩き方などのチェックを行ないます。
散歩の際には犬と並んで歩くだけでなく、犬の歩く後ろ姿を確認すると異常を見つけやすいですよ!
そして上記の【症状】に書いてあるような症状が見られたなら、早めにご相談ください。
股関節形成不全症を起こしやすい犬種
- ラブラドール・レトリバー
- ゴールデン・レトリバー
- バーニーズ・マウンテンドッグ
- セント・バーナード・オールド
- オールド・イングリッシュ・シープドッグ
- 大型犬
まとめ
股関節形成不全症は、症状だけではわかりにくく診断もできません。
しかし健康診断を行い治療すれば、健康な時と変わらない生活ができます。
もし何か気になる症状がみられたり、投薬中の体調等で気になることがある場合はご相談ください。
健康に楽しく過ごせる生活を、スタッフ一同でお手伝いいたします!
【参考:骨に関する他のコラム】
・犬の骨折:https://blog.dr-nyan.com/columns/dog-fracture/
・犬の椎間板ヘルニア:dr-nyan.com/columns/dog-herniated-disc
・犬の膝蓋骨脱臼:dr-nyan.com/columns/dog-patellar-luxation