【慢性肝炎】犬の慢性肝炎とは?症状や治療法を解説
2022.02.13
なんかかったるくて、元気も食欲も無い。
そんな症状がみられたら「慢性肝炎」かもしれません。
どうにかしてッ!
血液検査してみようね!
どういうこと??
慢性肝炎は、長い期間ゆるやかな経過をたどる肝臓の病気です。
しかも慢性肝炎の状態が続くと、肝硬変や肝性脳症などといった別の病気になることもあります。
それでは様々な症状を引き起こす「犬の慢性肝炎」の原因や対処法などについてDr.Nyanが説明しますね。
もくじ
慢性肝炎の症状
まずは肝臓の位置と働きについて説明しますね。
肝臓の位置と働きについて
肝臓は体の真ん中付近に位置する大きな臓器です。
肝臓には、以下のような三つ大きな働きがあります!
1.胆汁(たんじゅう)を作る
脂肪を消化するために重要な働きをする『胆汁』を生成しています。
2.栄養素を貯えたり変化させたりする
多くの食べ物は、そのままでは体には吸収されません。
そのため栄養素として体が吸収できるように、それぞれの組織に適した形に肝臓が作り替えています。
例えは、ぶどう糖をグリコーゲンに変えて肝臓に貯え、必要な時にエネルギーとして使うために体内へ送り出します。
3.毒を中和する
肝臓は体の中にある毒素を分解して、無毒化しています。
例えばタンパク質が分解されるときに出る、有毒なアンモニアを無毒化しています。
でもどんな症状がでたら要注意なのか一緒に確認していきましょう!
【初期症状】目立った症状はない
初期には目立った症状が、ほとんどありません。
場合によっては
- 元気がなくなる
- 食欲が落ち
- よく寝てる動きたがらない
など歳をとったかのような感じに見えることもあります。
そのため老犬が肝炎を起こすと、老化と勘違いされ発見が遅れてしまうことがあります。
【中期症状】元気がなくなり、食欲がなくなる
進行するにつれ徐々に元気がなくなり食欲も落ちて、体重が減ってしまいます。
肝臓の機能が悪いとアルブミンが作られなくなったりし、栄養状態が悪くなってしまいます。
以下のような症状が見られるようになります。
- 元気がない
- 食欲が落ちる
- 体重が減る
- 疲れやすい
- ウンチが軟らかくなる
- 水を飲む量やオシッコの量が増える(多飲多尿)
- 吐き気が出る
【後期症状】体のむくみや黄疸がみられる
続く炎症により肝臓の細胞が壊れ、肝臓が小さく硬くなる肝硬変を起こします。
その結果、体のむくみや腹水、黄疸(おうだん)、出血しやすいなどの症状が見られます。
重症化した場合には以下のような症状が見られるようになります。
- お腹に水が溜まる
- 黄疸になり、歯ぐきや白目が黄色くなる
- 出血が止まりにくい
- 肝硬変を起こす
- 肝性脳症になる
最初は眼の白目が黄色くなり、だんだん皮膚も黄色くなっちゃうんだ!
肝臓で解毒できなくなったアンモニアが脳や体をまわると、痙攣などの神経症状を引き起こしてしまう『肝性脳症』という危険な状態になります。
慢性肝炎の原因
ほとんどの慢性肝炎は、いろいろな検査を行っても原因がわかりません。
しかし中には原因が特定できるものがあります。
慢性肝炎になる原因として見られるものには、以下のようなものがあります。
肝臓に銅が溜まることによるもの
慢性肝炎の中でも原因を特定しやすいのが、肝臓に銅が溜まることで起こる「銅蓄積性肝炎」です。
この肝炎は、遺伝が関わりがあることがあります。
そのため、同じ血縁関係にある犬に発症しやすい傾向があります。
薬や毒によるもの
フェノバルビタールやステロイドなどの薬を飲み続けていると、肝臓がダメージを受けてしまいます。
また体に毒性のあるモノの誤食・誤飲により起きた肝臓へのダメージが治らず、慢性肝炎になってしまうことがあります。
感染によるもの
ウイルスや細菌、回虫などの寄生虫により受けた肝臓の大きなダメージが、長引いてしまうことにより起こります。
食べるモノによるもの
ヒトの食べ物や脂肪分の多いオヤツやフードを食べていると、肝臓に負担がかかり慢性肝炎を引き起こします。
日々の食べモノがジワジワと肝臓にダメージを与えていくため、発見が遅れてしまうことが多々あります。
他の病気によるもの
別の病気が原因で肝炎を引き起こすこともあります。
- 肝臓や胆管・胆嚢の腫瘍
- 胆嚢炎
- 膵炎
などから肝臓がダメージを受け、慢性肝炎となることがあります。
慢性肝炎の主な治療法と費用
慢性肝炎では肝臓の細胞が壊され他の組織に置き換わってしまうため、治療しても元の状態には戻らない病気です。
肝臓の治療は、肝臓の炎症と肝臓機能の低下を抑えることが主になります。
そのため治療としては、主に以下のことを行います。
- 原因と考えられるものを少しでも減らす
- 投薬や対処療法など内科的な治療を行う
- 病気の進行を遅らせる
治療を行うに際しては、慢性肝炎の状態などを知るためにも検査をする必要があります。
慢性肝炎の検査には触診、血液検査、レントゲン検査、超音波検査、血液凝固検査、病理組織検査などを行います。
原因と考えられるものを少しでも減らす
銅の蓄積や感染症などが原因の場合は、それぞれの原因に対しての治療を行います。
【銅が蓄積している場合】
銅を肝臓からある程度取り除くことのできる銅キレート剤や、銅を腸からの吸収を抑えることのできる亜鉛塩を使用します。
【免疫異常による肝炎と疑われる場合】
ステロイドや免疫抑制剤を使います。
【感染を起こしている場合】
原因である感染症に対する治療を行います。
薬が原因となる場合には、薬の使用をやめます。
どうしてもやめることが出来ない場合には、使用する量を減らしていきます。
投薬や対処療法など内科的な治療を行う
内科的治療では肝臓の炎症と肝臓機能の低下を抑えることが主になります。
炎症に対する治療には、ステロイド剤を使うことがあります。
また吐き気や嘔吐などの消化器障害も見られる場合、その症状をやわらげる治療を行ないます。
肝臓機能の改善には抗菌薬など、様々な薬が使用されます。
肝臓の機能が落ちると体内の栄養分であるアルブミンが不足するため、栄養状態が悪くなり血液中のアミノ酸バランスが崩れてしまいます。
この場合にはアミノ酸製剤を使いアミノ酸のバランスを整えることにより、慢性肝炎の症状を改善することが出来ます。
肝性脳症を発症した場合には、肝性脳症に対する集中的な治療が行われます。
病気の進行を遅らせる
良質なタンパク質を含む、適切なフードを積極的に使うことが勧められます。
場合によっては肝臓病用の療法食を使うのも、良い方法です。
また運動を行うなどして、ストレスの少ない生活がおくれるようにします。
治療費
症状の違いや使用する薬、治療期間の違いから治療費が変わります。
また消化器障害を起こしていたり、症状が重度になっている場合には治療期間も長く治療費もかかってしまいます!
慢性肝炎の予防方法
ワクチン接種を行う
犬の肝炎を引き起こす原因としてよく挙げられるのが「犬アデノウイルスⅠ型」と「レプトスピラ」です。
これらは、混合ワクチン接種をすることにより予防することができます。
定期的に肝臓機能や健康診断を受ける
テンカンなどの痙攣を抑えるフェノバルビタールは、長い期間飲んでいると肝臓に影響を与えてしまいます。
この他にも続けて飲まなくてはならない薬を使用している場合には、肝臓機能に問題が起こっていないか定期的に血液検査をする必要があります。
肝臓への銅蓄積が遺伝的に多い犬種では、定期的な健康診断を行います。
早めに異常が見つかれば、処置も早くでき重症化を防げます。
慢性肝炎になりやすい犬種
- 遺伝性の慢性肝炎が多い犬種
- ベドリントン・テリア
- ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ダルメシアン
- ラブラドール・レトリバー
- ドーベルマン・ピンシャー
- アメリカンコッカースパニエル
- イングリッシュコッカースパニエル
まとめ
犬の慢性肝炎は犬によく見られる病気です。
しかし気をつければ重症化が防げるのが、慢性肝炎です。
気になる症状が見られたり心配なことがあったなら、早めにご相談くださいね!
安心して暮らせるよう、お手伝いをいたします!