【猫白血病ウイルス感染症】猫白血病ウイルス感染症とは?その症状や治療法を解説
2022.11.28
外に出てから、なんか不調で熱っぽいし口内炎もできちゃうし・・。
そんな症状がみられたら「猫白血病」に感染しているかもしれません。
しかも首や脇の下にコリコリしたものが出来ちゃってるの、これって何なの?
血液検査で感染がわかるから、調べてみようね。
猫白血病ウイルス感染症は、猫白血病ウイルス(Feline Leukemia Virus:FeLV)の感染により引き起こされる病気です。
日本の猫の約3~5%が猫白血病ウイルスに感染していると言われています。
しかも感染し発症した場合にはリンパ節などが腫瘍化したり、骨髄にまで影響してしまいます。
その結果、2~5年以内に死亡してしまう可能性があるとても怖い感染症です。
特に子猫の場合は発症しやすく、死亡率も高いと言われてます。
では「猫白血病ウイルス感染症」の原因や対処法などについて、Dr.Nyanが説明しますね。
もくじ
猫白血病の症状
猫白血病ウイルス感染症の大きな特徴は、「日和見感染(ひよりみかんせん)」を起こしてしまうことです。
そのため猫白血病ウイルスに感染し発症したとしても、特有の症状が見られるわけではありません。
日和見感染とは免疫力が低下することにより、健康であれば感染症を起こさないような病原体に負けてしまい病気になってしまうことです。
特定の症状が出るわけではなく、風邪をひきやすくなったりなど様々な病気を発症してしまいます。
その中でもよく見られるのが、口内炎や貧血、下痢や吐き気などの症状です。
免疫力が低下してしまうと病気にかかりやすくなるだけでなく、治りにくくもなってしまいます。
その進行度と病状により、以下のように分けられています。
- 初期感染期
- 持続感染期
- FeLV関連疾患期
初期感染期
初期の感染の場合 猫白血病ウイルスの感染初期では、以下のような風邪に似た症状が1週間~数ヶ月ほど続きます。
・くしゃみ
・発熱
・食欲が無くなる
・元気が無くなる
・全身のリンパ節が腫れる
感染初期では体の持つ免疫力により、体内から猫白血病ウイルスが排除されてしまうことがあります。
その場合には、感染しても「一過性」で終わってしまうことがあります。
そのため症状が治まったかのようになり、何事も無かったように見えます。
また中には、完全に回復する猫もいます。
しかし猫白血病ウイルスの増殖を抑えてはいるものの、体内から排除しきれない事もあります。
このような場合には、猫白血病ウイルスを体の中に一生持ってしまうことになります。
持続感染期
猫白血病ウイルスが、体内から排除されない状態が続くことを「持続感染」と言います。
そのため「持続感染」になると、猫白血病ウイルスを体の中に一生持ってしまいます。
しかも猫白血病ウイルスは、体の中で徐々に増えていってしまうのです。
この状態となった場合には、だいたい3年以内に「FeLV関連疾患」を発症してしまいます。
しかも「FeLV関連疾患」は治ることは難しく、ほとんどの場合が死に至ってしまいます。
持続感染になってしまう割合は、以下のようと言われています。
・生まれたてでの感染ではほぼ100%
・離乳期を過ぎての感染では約50%
・1歳以上の猫では約10%
FeLV関連疾患期
猫白血病ウイルスの持続感染期に発症する、様々な病気のことをFeLV関連疾患と言います。
FeLV関連疾患の症状には、以下のようなものがあります。
・白血球減少
・貧血
・リンパ腫などの腫瘍
・口内炎
・鼻炎
・腎炎
・食欲が落ちる
・元気が無くなる
・痩せる
・下痢や嘔吐
・免疫力の低下
免疫力が落ちるため、日和見感染を起こしやすくなります。
日和見感染からトキソプラズマ症やクリプトコッカス症、ヘモバルトネラ症、猫伝染性腹膜炎(FIP)などの感染症に罹りやすくなってしまいます。
体の表面に近いリンパ節の腫れは、手で体に触れると容易に確認ができます。
腫れがわかりやすいリンパ節の場所を、以下の図で赤字で示していみました。
- 顎の骨と首の境目、ヒトで言う喉仏あたりにある「下顎(かがく)リンパ節」
- 足の付にある「鼠径(そけい)リンパ節」
- 膝の後ろにある「膝窩(しっか)リンパ節」
貧血を起こすと疲れやすくなったり、食欲が落ちてしまいます。
この状態が進むにつれ、全身の状態が増悪していき最終的には死に至ってしまいます。
猫白血病ウイルス感染症の原因
猫白血病ウイルス感染症は、猫白血病ウイルス(Feline Leukemia Virus:FeLV)に感染することによって発症します。
猫白血病ウイルスの感染は、唾液、尿、涙、オシッコやウンチなどに含まれたウイルスが、口や鼻から入ることで起こります。
これを経口感染と言います。
経口感染の中でも、特に唾液や鼻水に触れることでの感染が多いとされています。
例えば猫白血病ウイルスに感染にした猫とのグルーミングなどの接触による感染です。
また感染した猫が妊娠した場合には、母猫から子猫へも胎盤や母乳を介して感染します。
同じ器を使ったりすることでの感染も、可能性は低いとは言われますが無いとは言えません。
一般に、新生児の時点で感染した猫の80~100%が持続感染となってしまいます。
また1歳を超えて感染した場合には、持続感染となることが少ないとされています。
持続感染となった猫は、発症しなくても他の猫に感染させてしまうことがあります。
つまり健康そうに見えても、実は「持続感染」だったと言うこともあります。
そのよう猫と関われば猫白血病ウイルスを貰ってしまうこともある、と言うことになります。
猫白血病ウイルス感染症の主な治療と費用
治療前には、猫白血病ウイルスに感染しているかの検査を行う必要があります。
検査には猫から少量の血液を採取して行います。
猫白血病ウイルス感染症に対する、根本的な治療法はありません。
そのため症状の改善と二次感染を防ぐためなど、感染症にともなって現れる症状にあわせて対処療法を行います。
対症療法
発症した症状に対して、緩和を図ることを目的とします。
たとえば口内炎が出来たなら、痛みを和らげてあげるため抗炎症剤や鎮痛剤などを使います。
フードが食べられない場合には、チューブや注射器による強制給餌を行います。
また脱水しているならば点滴を行うなど、それぞれの症状に対して治療を行います。
貧血などの症状が強い場合には輸血を行うこともあります。
細菌などの感染症になった場合には、抗生物質を使います。
悪性腫瘍、特にリンパ腫になるな場合もあり抗がん剤での治療を行うこともあります。
ただ全身的に免疫力が落ちているため、治療には困難が伴います。
抗ウイルス薬
猫白血病ウイルスに有効な薬はありません。
治療に猫インターフェロン(rFeIFN-ω)を使うことがあります。
猫インターフェロンには、以下のような働きがあります。
・ウイルスの増殖の阻止(抗ウイルス作用)
・細胞の増殖の抑制(抗腫瘍作用)
・免疫機能の調節(免疫調節作用)
猫インターフェロンを使うことで、生存期間が延びたとの報告もあります。
検査での注意点
猫白血病ウイルス(FeLV)感染症を疑う場合には、血液検査により『FeLV検査』を行います。
猫白血病ウイルスは、感染後約4週間でFeLV検査で検出することができます。
つまり外に出たからと言って、即検査しても感染は感染はわかりません。
感染の可能性があるならば、4週間ほど待ってから検査を行います。
検査を行い陽性と結果が出ても、一過性の場合もあります。
その場合には、1か月後に検査を行います。
そのときに再度陽性であれば、猫白血病ウイルス(FeLV)に感染していると確定します。
この陽性が陰性になる理由ですが、FeLV検査は抗原検査しています。
そのため1度目の検査でウイルス陽性であっても、そのウイルスが完全に排除されれば検査で陰性になります。
抗体検査の場合には、このようなことにはなりません。
治療費
感染の度合いや使用する薬、治療期間の違いから治療費が変わります。
ま混合感染や併発症など様々な病気が重なっている場合には、治療期間も長く治療費もかかってしまいます!
猫白血病ウイルス感染症の予防方法
感染した猫と接触しなければ感染しない!
そう言われています!
屋内飼育の徹底
猫白血病ウイルス感染症の最も確実な予防方法は、感染している猫と接触させないことです。
そのため完全室内飼いとし、猫を外に出さないことが重要です。
特に逃亡癖のある猫は、外に出ないように特に注意をすることが大切です!
徹底した 消毒の実施
猫白血病ウイルス(FeLV)は消毒薬に弱いウイルスと言われています。
そのため70%エタノール(アルコール)や塩素系漂白剤などを使用し消毒します。
ノミの感染を予防する
猫白血病ウイルスに感染した猫の血を吸ったノミに、猫白血病ウイルスがいることがあります。
そのためノミから感染することもある、と考えられています。
外に出ないからノミには感染しないだろうと、安心してはいけません。
屋内で飼っていた猫にノミが寄生していたことがあります。
屋外に出なくても、ノミの予防を行うことが重要です。
ワクチン接種をする
猫白血病ウイルスは、猫白血病ウイルスに感染した母猫から子猫への感染は防ぐことはできません。
しかし生まれてからの感染は、ワクチン接種を行うことで予防してあげられます。
完全室内飼育であっても、脱走の可能性やペットホテルに預ける機会があるような場合にはワクチン接種は大切です。
猫白血病ウイルス感染症を予防するには、猫5種混合ワクチンを行います。
ワクチンを接種しても、感染を100%予防できるわけではありません。
ワクチンは、万が一感染した場合に重症化を抑えるためのものです。
ストレスのないようにする
猫白血病ウイルスに感染している場合には、発症を予防することが大切です。
そのためにはストレスの少ない環境で過ごさせてあげる、これが一番重要なことです。
また水分と栄養に気をつけ、体調が悪くならないようにしてあげます。
快適に過ごせる環境は、ストレスが少なく体調も良い状態を維持できます。
また免疫力も高く保つことができます。
その結果、発症のリスクが上がりにくくなります。
栄養と睡眠が大切
バランスのとれたフードを与え、栄養状態に気をつけます。
また睡眠も十分にとれるようにするなど、生活環境にも注意を払います。
日和見感染を防ぐ上でも、十分な栄養と清潔で快適な生活環境を心がけることも大切です。
栄養価の高い食事を選び免疫力を高め、ストレスをためずに過ごせるよう心がけてあげます。
定期検診を受ける
万が一感染しても、ハッキリした症状が初期には出ないこともあるため注意して観察します。
体調に大きな変化がない場合でも、内臓の健康状態を知るためにも定期的に健康診断を受けることが大切です。
特に腎臓や肝臓の状態には、注意が必要です。
多頭飼育の場合は隔離をする
先住猫がいる場合、新しく猫を迎える際にはウイルス検査を行います。
その場合には陰性と診断されるまでは、隔離しておくことが大切です。
感染が疑われる場合は、検査で陰性であっても時間をあけて再度検査を行います。
多頭飼育の場合には感染猫を隔離し、他の猫に感染しないように心がけます。
またヒトを介しての感染が無いように、十分に注意します。
猫白血病ウイルス感染症になりやすい猫
- 外に出ている猫
- 免疫力が弱まっている猫
- 持続的なストレスがある猫
まとめ
猫白血病ウイルス感染症は猫免疫不全ウイルス(FIV)感染症と同様に、猫ではとても怖い感染症のひとつです。
しかし予防もできる病気のひとつです。
予防するにはワクチン接種、そしては室内飼育と感染猫との隔離がもっとも重要と言えます。
もし感染していたなら発症しないよう、健康状態が維持できるようにお手伝いいたします。
また少しでも気になる兆候が見られたら早めにご相談くださいね!
安心して暮らせるお手伝いをいたします。