【横隔膜ヘルニア】猫の横隔膜ヘルニアとは?症状や治療法を解説
2022.11.22
猫が突然、息がちゃんと吸えず苦しそうで動かない!
そんな症状がみられたら「横隔膜ヘルニア」を引き起こしているかもしれません。
しかも息苦しそうなんですけど、どうしたのかしら?
「ヘルニア」と言うと、椎間板ヘルニアを思い浮かべるヒトも多いのではないでしょうか。
「ヘルニア」とは体にある隙間や穴の開いていない場所が破け、そこから臓器や組織が飛び出てしまうことを言います。
そのため起こした場所や状態により、様々な「ヘルニア」があります。
ヘルニアの中でも横隔膜に起こった「横隔膜ヘルニア」は、猫で見られることが多い病気です。
ここでは『猫の横隔膜ヘルニア』の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。
もくじ
横隔膜ヘルニアの症状
「横隔膜」は心臓や肺が入っている「胸腔」と、胃や腸、肝臓などの臓器が入っている「腹腔」を分けている膜です。
この横隔膜に穴が開くなどで、腸などが胸腔内に入り込んしまう病気が「横隔膜へルニア」です。
横隔膜ヘルニアの症状の大きな特徴は「呼吸のしかた」がいつもと違うことです。
横隔膜ヘルニアになると肺が押されるため、息しくなってしまいます。
どのように違うかはハッキリわからなくても、何かが違うと思ったら横隔膜の確認が必要です。
それでは一緒に症状を確認していきましょう!
胸とお腹の動きが変に見える
健康な体は、息を吸うときは胸とお腹が同時に膨らみ、息を吐くときは同時に縮みます。
しかし、横隔膜ヘルニアの場合、息を吸うと胸は膨らむのだがお腹が減っこみ、息を吐くと胸は縮むのにお腹が膨らんだように見えます。
この症状は、胸腔の中に臓器や組織が入ってしまうヘルニアに見られます。
時間が経つにつれ徐々に胸腔に臓器が入り込んでくることもあるため、症状も徐々に出てくることもあります。
呼吸が苦しくなる
横隔膜が破れ腹腔内の臓器が胸腔に入ると肺が押され、呼吸がうまくできなくなります。
また肺が圧迫されてしまうことにより、苦しくなってしまいます。
そのため呼吸が浅く早く、しかも動くことを嫌がるようにもなります。
吐き気や下痢
胸の中に胃や腸が入り込むと胃腸の動きが悪くなり、吐き気や下痢を起こすことがあります。
ショック症状を起こす
事故や高いところから落ちるなどの場合には、事故直後から肺が圧迫されるため呼吸の異常がすぐに見られます。
また横隔膜の損傷が激しい場合には胸腔の中に入り込む臓器の量も多く、そのぶん肺も押されます。
そのため呼吸困難や、ショック症状が見られる場合があります。
ショック状態とは『血液の循環がうまくいかなくなり脳や体の中の様々な臓器が酸素不足となり,命にかかわる大変に危険な状態』を言います。
ショックを起こすと、血圧が下がる,脈が弱くなる,意識が薄れるなどの症状が見ら、場合よっては亡くなってしまいます。
そのためショック状態となったときには、緊急に治療することが重要となります。
~Dr.Nyan ポイント~
少ないけど先天性横隔膜ヘルニアもあるよ!
生まれつき横隔膜ヘルニアを患っている猫がまれにいます。
症状としては
- 食が細く発育が遅い
- 食後や運動後に呼吸が早く疲れやすい
がみられます。呼吸器の症状は、離乳期を迎える頃に現れることが多いようです。
横隔膜ヘルニアの原因
横隔膜ヘルニアは、その原因によって次の3種類にわけられます。
- 交通事故や高い場所から落ちて起こる「外傷性横隔膜ヘルニア」
- 先天的に心膜と腹腔がつながっている「横隔膜腹膜心膜ヘルニア」
- 食道や胃の一部が胸腔に入り込んで起こる「食道裂孔ヘルニア」
交通事故や高い場所から落ちる
交通事故や高い場所から落ちる、またケンカなどによる外傷が原因で起こるヘルニアを『外傷性横隔膜ヘルニア』と言います。
猫では、この外傷性隔膜ヘルニアが多いと言われています。
体が大きな衝撃を受けた際にお腹が強く押され、腹腔の圧が上がり腹部と胸部を隔ていている横隔膜の一部が破れてしまうことにより起こります。
その破れた穴から、胃や腸などのお腹の臓器が胸腔の中に押し出されてしま『外傷性横隔膜ヘルニア』となります。
生まれつき心膜と腹腔がつながっている
生まれつき、心臓を包んでいる膜(心膜)と腹腔がつながってしまっているのが『横隔膜腹膜心膜ヘルニア』です。
そのため心膜内に、お腹の臓器が入り込んでしまっています。
食道や胃の一部が胸腔に入り込んで
横隔膜には、食道が通る穴(食道裂孔)があります。
その穴(食道裂孔)が緩むなどの異常から、食道や胃の一部が胸腔に入り込んでしまうのが『食道裂孔(しょくどうれっこう)ヘルニア』です。
横隔膜ヘルニアの主な治療法と費用
外科的治療
猫が若く横隔膜の穴が大きい場合には、外科手術が第一選択となります。
その場合には、まず猫の状態を落ち着いてから手術を行います。
手術は全身麻酔をして、また場合により人工呼吸器を使い行います。
胸腔の中に入り込んだ臓器を元の位置に戻し、横隔膜を縫うなどして正常の位置に戻します。
心臓や肺への圧迫が強い場合や癒着が激しい場合は、手術時間も長くなるためリスクも高くなります。
特にヘルニアの状態が長い間続いていると、肺に入り込んだ臓器と胸膜などの癒着が強くなります。
内科的治療
健康診断などで偶然に見つかり、症状が見られない場合には経過を観察となることがあります。
また発症から時間が経過し、目立った症状があまり見られない場合にも同様に経過を観察したり内科的に治療を行うこともあります。
高齢であったり症状が軽い場合では、内科的に症状を改善させる治療を行うこともあります。
横隔膜ヘルニアの治療費
軽度の横隔膜ヘルニアでは検査費や投薬で、5,000円〜9,000円程度です。
手術を行う場合には、ヘルニアの程度や猫の状態によって治療費に違いがあります。
手術費や入院費を含めて、数十万はかかります。
横隔膜ヘルニア以外に、併発症として骨折などがある場合には治療期間も治療費も高額になってしまいます。
やはり症状的にも経費的にも、横隔膜ヘルニアは予防することが大切です。
横隔膜ヘルニアの予防方法
猫の横隔膜ヘルニアの原因は、外傷性によるものがほとんどです。
しかも、その多くは交通事故と言われます。
完全屋内での飼育を徹底
交通事故やケンカを防ぐ事が、予防につながります。
また事故に遭っても猫が帰ってくるまでは、状況もわからず発見も遅れてしまいます。
外に出さない、これが一番の予防です!
猫の様子や動きを日頃から観察する
屋内での転落事故が原因になることもあります。
そのため、ちょっとした呼吸や体調の変化にも気付いてあげることが大切です。
また横隔膜ヘルニアは、徐々に進行していくこともある病気です。
以下の項目に当てはまるものがあった場合には、ご相談ください。
- 息苦しそう
- 息が浅く
- 息が早い
- 息をするときの胸とお腹の動きが何か変
- 吐く
- 下痢をする
- 成長が悪い
早期発見、早期治療により快適に生活をさせてあげたいものです。
横隔膜ヘルニアを起こしやすい猫種
- メインクーン
- ヒマラヤン
- 長毛種の猫
- 屋外に出る猫
まとめ
猫における横隔膜ヘルニアの多くは、外に出なければ防げます。
そのためにも、安全な家の中で事故の無いよう心がけましょう。
少しでも気になる様子があったら、早めにご相談下さい!