【伝染性腹膜炎】猫の伝染性腹膜炎(FIP)とは?症状や治療法を解説
2021.09.10
子猫なのに、妊娠したようにお腹が膨らんでいる。
しかも元気も無くなって、食欲も落ちてきてしまっている!
そんな症状みられたら「猫の伝染性腹膜炎(FIP)」を引き起こしているかもしれません。
どうしてなの?
色々と検査して調べてみようね!
これって腹水ですね!
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、「猫腸コロナウイルス」が猫の体内で変異した「猫伝染性腹膜炎ウイルス」により引き起こされる病気で、1歳未満の子猫で発症することが多いとされています。
また確定診断も難しく効果的な治療も予防法も無く、命にも関わることもありまるため猫にとって非常に怖い病気の一つです。
ここでは『猫の伝染性腹膜炎(FIP)』の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。
もくじ
伝染性腹膜炎(FIP)の症状
猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状はさまざまですが、症状の違いから二つに分けられます。
- ウェットタイプ
- ドライタイプ
どちらのタイプを発症するかは、伝染性腹膜炎ウイルスに対する免疫反応の違いによると言われています。
また必ず、ウェットタイプかドライタイプのどちらかが発症するわけではありません。
ウェットタイプだったのがドライタイプに、その逆のウェットタイプからドライタイプになってしまうこともあります。
また、それらの混合タイプのような症状の場合もあります。
ウェットタイプかドライタイプでは特徴的な症状の違いがありますが、共通の症状もあります。
猫伝染性腹膜炎で共通してみられる症状
ウェットタイプとドライタイプで見られる共通の症状には、以下のようなものがあります。
- 元気がなくなる
- 食欲が落ちてくる
- 熱が出る
- ウンチがビチャビチャになる
- 吐き気がある
- 体重が減ってしまう
腹水などが溜まるウェットタイプの症状
ウェットタイプの症状の特徴は、呼吸困難やお腹が膨らんでくるです。
「胸膜炎(肺の表面を覆う胸膜に炎症が起こる疾患)」を起こすと胸水が溜まり息をするのが辛く呼吸数も増えてしまいます。
また場合によっては、呼吸困難のもなってしまいます。
また「腹膜炎(腹部の臓器を覆ってる膜に炎症が起こる疾患)」を起こすと腹水が溜まり、お腹が膨らんでしまいます。
さらに血管に炎症が起き体の様々な組織や臓器が侵される「血管炎」を起こすこともあります。
双方とも、見た目の変化が分かりやすいという特徴があります。
またウェットタイプは進行が早く、発症から亡くなるまでがとても早いことも特徴の一つです。
肉芽腫などが作られるドライタイプの症状
ドライタイプは、慢性的な炎症からいろいろな臓器に「肉芽腫」と呼ばれる「しこり」が作られるのが特徴です。
肉芽腫が肝臓に作られると肝機機能が、腎臓に作られると腎臓機能が低下してしまいます。
また脳に作られれば痙攣などの神経症状が、眼に作られればブドウ膜炎など眼に症状が現れます。
ドライタイプでは胸水や腹水は溜まらないため、見た目では分かりづらく発見が遅れることがあります。
しかし病状の進行がウェットタイプに比べて遅いことが、唯一の救いです。
伝染性腹膜炎(FIP)の原因
猫伝染性腹膜炎の原因は「猫腸コロナウイルス」が変異した「猫伝染性腹膜炎ウイルス」の感染によるものです。
「猫腸コロナウイルス」は下痢を引き起こすウイルスで、感染した猫のウンチやオシッコ、唾液などの中に含まれているウイルスに触れて起こります。
病原性が低くいため感染しても無症状のこともあります。
しかし猫の体の中で変異を起こてしまうと、病原性が強い「猫伝染性腹膜炎ウイルス」となってしまいます。
変異を起こす原因の一番は「ストレス」と考えられています。
しかし猫伝染性腹膜炎ウイルスに感染しても、すべてが発症するわけではありません。
それは「猫腸コロナウイルス」が「猫伝染性腹膜炎ウイルス」に変異する際、その病原性の強さに差ができてしまうことと感染した猫の免疫力の強さによると言われています。
伝染性腹膜炎(FIP)の主な治療法と費用
猫伝染性腹膜炎は発症すると、そのほとんどが死に至ってしまう病気ですが、伝染性腹膜炎は今のところ有効な治療法がありません。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の診断は一般状態や血液検査、X線検査、超音波検査、PCR検査など様々な検査を行います。
しかし猫伝染性腹膜炎(FIP)を疑いPCR検査を行ってもウイルスの検出ができず、診断が困難なこともあります。
そのため他の検査結果や症状と合わせて診断する必要があります。
特にドライタイプではウェットタイプのように腹水や胸水のようなわかりやすい症状が見られないため、さらに診断が難しくなっています。
このように猫伝染性腹膜炎(FIP)の診断は、非常に難しいことがあります。
猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療費について
猫伝染性腹膜炎は診療が長期間にわたることもあり、診療費も高額になる傾向にあります。
重症になると入院も必要となるため、それだけ治療費もかかってしまいます!
やはり症状的にも経費的にも、早期発見が大切です。
伝染性腹膜炎(FIP)の予防方法
残念ながら猫伝染性腹膜炎(FIP)を直接予防する方法はないため、猫腸コロナウイルスの変異を防ぐことが大切です。
そのためにもストレスの少ない環境づくりを心がけることが重要です。
また免疫力が落ちないようにも、してあげることが大切です。
ただ猫によってストレスを感じるものは違いますが、以下のようなものには気をつけて下さい。
- 寒暖の差など環境の変化に気を付ける
- 消化の良いフードを食べさせ栄養状態に気をつけておく
- 落ち着いた場所でフードを食べたり水が飲める
- 綺麗なトイレを落ち着く場所に置く
- 多頭飼育には互いの距離などに注意
- 運動不足を解消する
数日、下痢が続くなどの症状が見られたら早々に受診してください!
伝染性腹膜炎(FIP)起こしやすい猫種
- 1歳以下の若い猫
- 老齢の免疫力の落ちた猫
まとめ
猫伝染性腹膜炎(FIP)は診断されても、治療も予防も難しい病気です。
そのためま元気や食欲が無くなり痩せてしまうなど、気になる兆候が見られたら早めにご相談くださいね!
もし猫伝染性腹膜炎(FIP)に罹っても辛く無い生活が出来るよう、お手伝いします!
【参考コラム】日本臨床獣医学フォーラム