【回虫症】猫の回虫症とは?症状や治療法を解説
2021.10.29
体は痩せている、それなのに妙にお腹が大きくカエルみたく張っている。
そんな症状がみられたら「お腹の中に虫」が寄生しているかもしれません。
どうにかしてやって〜ッ!
これ虫?何なのかな?
見せてごらん?
それって大変なことじゃない?
動物のお腹の中に住む、代表的な寄生虫として知られているのが『回虫』です。
その中でも、猫に寄生するのが猫回虫(Toxocara cati)です。
外に出る猫は、屋内に住む猫よりも回虫に感染する機会が多くなります。
しかも回虫は猫だけでなく、ヒトにも感染することがあります。
そのような「猫回虫」の原因や対処法などについてDr.Nyanが説明しますね。
もくじ
猫回虫症の症状
猫回虫に感染する多くは、回虫の卵が口から入ることによります。
猫回虫は成虫になると小腸に寄生し体長は3~14cmくらいにまでなり、犬回虫より少し小さめです。
見た目が細い虫のため、寄生虫の中の線虫というグループに属します。
でもどんな症状がでたら要注意なのか、確認していきましょうね!
~Dr.Nyan ポイント~
回虫の卵は数年間生き続ける?!
回虫の卵はウンチと一緒に体の外へ出たときは、まだ未熟な状態で感染力がありません。
しかし卵は成熟し、卵の中に幼虫がいる状態になると感染力を持つようになります。
回虫の卵は、シェルターの様な丈夫な殻で中身が守られています。
そのため体の外に出ても生きていくことができ、条件さえ良ければ体外で感染力を持ったまま数年間は生き続けることもできます。
吐いたり下痢などの消化器症状
回虫の成虫は小腸に寄生します。
その多くは無症状ですが、場合によってはウンチが軟らかくなったり吐き気などの症状がみられることがあります。
吐いたものやウンチの中から、回虫が出てくることもあります。
仔猫の場合、体は痩せているのにお腹がカエルのように張って大きいこともあります。
また腸の中で詰まって、腸閉塞がみられこともあります。
混合感染で重症化
他の寄生虫などと混合感染してまうと、回虫を駆除しても症状がなかなか改善しないことがあります。
例えば猫回虫と一緒に、コクシジウムなどの原虫や他の寄生虫が感染している場合などです。
また消化器症状を起こす細菌やウイルスの感染も、同様に注意が必要です。
混合感染を起こすと、場合によっては入院での治療が必要となります。
特に仔猫では全身状態が簡単に悪くなりやすく、死に至ってしまうこともあります!
猫回虫症の原因
回虫の卵は丸い形をしており、とても小さく肉眼で見ることはできせん。
そのため顕微鏡での検査を行い、回虫の卵を見つけることで診断します。
繰り返したり治らない下痢などでは、早めに検査を行うことが大切です。
猫
回虫に感染する経路は、主に3つと言われます。
口からの感染
ウンチと一緒に出た猫回虫の卵は、その落ちた場所で成熟し感染力を持つようになります。
もし猫が、成熟状態となった卵を口にしてしまうと、回虫に感染してしまいます。
これを『経口感染』と言います。
妊娠中の母猫から胎仔への感染
回虫に感染した母猫の胎盤を通じて、回虫が子宮の中にいる仔猫に感染することがあります。
これを『胎盤感染』と言います。
母猫の母乳からの感染
回虫に感染した猫が妊娠し出産すると、母乳を飲んでる仔猫に母乳を介して回虫が感染します。
この母から仔へ、乳汁を介して感染することを『経乳感染』と言います。
~Dr.Nyan ポイント~
とても怖い臓器幼虫移行症(トキソカラ症)
猫回虫はヒトにも感染するため、人獣共通感染症の一つになっています。
猫回虫は、本来の宿主が猫であるためヒトに寄生しても成虫にはなれません。
そのためヒトに感染した場合には、腸の中ではなく肺や肝臓などの組織に寄生してしまうことがあります。
このように幼虫が様々な臓器内に入り、しかも重大な症状を起こしてしまうのが『臓器幼虫移行症(トキソカラ症)』です。
ヒトの臓器幼虫移行症には、二つの種類があります。
・内臓移行型;熱や咳など風邪のような症状や、肝臓障害などを起こすタイプ
・眼移行型;眼や脳に寄生し、失明や視力障害、痙攣などを起こすタイプ
猫回虫症の主な治療法と費用
猫回虫と他の寄生虫や感染症を併発してしまうと、ちょっと厄介です。
しかし一般的には、猫回虫を殺してしまえば結構治りは良いと言われています。
駆虫薬
線虫駆除薬を使うことで、駆虫することができます。
錠剤では、パモ酸ピランテルを含む薬剤(ドロンタール錠、バイエル)を使用します。
また飲ませるのが難しい場合には、スポットオン剤を背中に垂らします。
これにはセラメクチン(レボリューション、ゾエティス)などを使用します。
駆虫薬を定期的に投与することで、感染の予防が効果的にできます。
上記のレボリューションは回虫だけでなく、ノミや鉤虫なども予防します。
抗生剤や輸液剤の投与
嘔吐や下痢、発熱や元気・食欲の低下などの症状がみられる場合には積極的な治療が必要です。
また症状によっては、抗生剤や輸液剤などを使用した治療を行います。
治療費
感染の度合いや使用する薬、治療期間の違いから治療費が変わります。
体重にもよりますが、ウンチの検査と駆虫剤の内服タイプの投薬で治療費は4,000円くらいです。
しかし混合感染や併発症などで重度の消化器障害にまでなっている場合には、治療期間も長く治療費もかかってしまいます!
猫回虫症の予防方法
屋内飼育の徹底
猫回虫症はウンチとの接触による感染が多いので、猫を外に出さないことが予防につながります。
また新しい子を向かい入れた場合には、その子に感染が無いことが確認できるまでは隔離期間を設けます。
清掃の徹底
ウンチの中の回虫の卵が感染力を持つには時間がかかります。
そのためウンチをしたら、すぐに処理するなどの処置を行うことで感染のリスクが低くなります。
~Dr.Nyan ポイント~
外に出たことが無くても感染した例
完全屋内飼育、しかも同居の犬も猫も居ないのに寄生虫に感染してしまった猫がいます。
感染の原因としては、外から帰ってきた飼い主さんの靴に虫卵の含まれたウンチが付いていた。
つまり飼い主さんがウンチを踏んでしまった、ということです!
そして靴に付いてウンチが玄関に落ち、そこから感染したと考えます。
定期的に検便を行う
新たに猫を迎えた際には、必ずウンチ検査を行います。
特に仔猫は母子感染の可能性があるため、やはりウンチ検査を行います。
予防的投薬を行う
回虫の感染を疑う場合には、検便で回虫の卵が見つからなくても予防的な措置として駆虫を行います。
母子感染を起こしている場合には、生後3週目ころから虫卵がウンチと一緒に排泄されるようになります。
そのため仔猫では、生後3週齢ころまでには駆虫薬を飲ませる必要があります。
■定期的な投薬スケジュール
- 生後3週齢〜3ヵ月は2週間毎に投薬
- 3~6ヵ月齢は1ヶ月に1回は投薬
- 6ヵ月齢以降は3ヶ月に1回の投薬
予防的な投薬は、回虫の感染リスクを減らすためにも有効と言われています。
猫回虫症になりやすい猫種
- 外に出ている猫
まとめ
猫の回虫症は仔猫で多くみられる、しかもヒトにも感染することが知られています。
そんな回虫はお腹の中に住んでいますが、予防もできる寄生虫です。
もし、少しでも気になる兆候が見られたら早めにご相談くださいね!
安心して暮らせるお手伝いをいたします!
【参考記事】千葉県獣医師会 人獣共通感染症 関連資料