【乳腺腫瘍】犬の乳腺腫瘍とは?症状や治療法を解説
2021.07.05
お腹にコリッとした「しこり」がある!
そんな症状がみられたら「乳腺腫瘍」を引き起こしているかもしれません。
こっれって、なぁに?
『乳腺腫瘍』かもしれないから診てみようね!
悪性じゃないと良いですね!
犬の乳腺は左右5対、あわせて10個あります。
その乳腺の細胞が腫瘍化し「しこり」となったものが『乳腺腫瘍』です。
しかも乳腺腫瘍になる犬はとても多く、犬にできる腫瘍の約50%が乳腺腫瘍と言われています。
それだけ多い乳腺腫瘍ですが、気をつければ発症を防げる腫瘍でもあります。
ここでは『犬の乳腺腫瘍』の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。
※当記事は『猫の乳腺腫瘍の写真』を参考画像として載せています。苦手な方はお控え頂くか、十分注意してご覧ください。
もくじ
乳腺腫瘍の症状
乳腺腫瘍には良性と悪性がありますが、その中でも転移・再発の可能性が高い悪性腫瘍の発症率は乳腺腫瘍全体の25%と言われています。
乳腺腫瘍は初期症状がわかりにくいため、飼い主さんが気が付かないことがあります。
同様に犬も、乳腺腫瘍に対して気にする様子もあまりありません。
そのためこ「しこり」がある程度大きくなるまで気が付きにくいのが、犬の乳腺腫瘍です。
触った感じが固い
古い書物に乳腺腫瘍のことを「乳岩」と書いてあるように、触ると固くゴリッとしています。
また表面がデコボコで、形も整っていないように感じます。
健康な組織との境目も、はっきりとしていないこともあります。
できる場所も数も様々
犬の乳腺は、脇の下から内股まであります
。
そのため乳腺腫瘍の発症する場所も脇の下から内股まで様々ですが、一般的には内股に近い方に発症する傾向があります。
また一般的には、乳首に近い場所に発症しやすい傾向があります。
乳腺腫瘍は一つの乳腺だけでなく、複数の乳腺に発症することもあります。
また腫瘍の数も、1個から複数個できていることもあります。
腫瘍の大きさは数ミリから、巨大になったものまで様々です。
ジクジクしている
乳腺腫瘍は大きくなると、体の外に大きく腫れ出してきます。
その部位の皮膚が破けジュクジュクしたり、出血や壊死が見られるようにもなります。
また傷の表面から滲み出てきた液で、乳腺腫瘍の周囲が汚れ化膿したような異臭がするようになります。
呼吸が早い
乳腺腫瘍はリンパ節や肺、肝臓などに転移することもあります。
肺に転移すると、咳をしたり呼吸が早く荒くなるなどの症状も現れます。
赤く腫れるなど特徴的な症状を示す
他の乳腺腫瘍と症状が大きく違うのが、悪性乳腺腫瘍の中でも特に悪性度が高い『炎症性乳癌』です。
炎症性乳癌は乳腺が板状の固いしこりとなり、熱を持ち赤く腫れ痛みを伴います。
また炎症によりリンパの流れが悪くなり、後肢がパンパンに腫れて浮腫んでしまうこともあります。
炎症性乳癌は周囲の組織へ強い炎症を伴いながら、とても早く広がります。
しかも非常に転移しやすく、初診の段階ですでに肺に転移していることもあります。
乳腺腫瘍の原因
ホルモンとの関係
卵巣からのホルモンが、乳腺腫瘍の発症に何らかの影響を与えているものと考えられています。
- 未避妊の場合には、年齢が上がるにつれ発生率が高くなる
- 早期に避妊手術を行うと、乳腺腫瘍の発生率が低くなる
このような事例もあるため乳腺腫瘍はホルモンとの関係が深いと言われています。
乳腺腫瘍の主な治療法と費用
乳腺腫瘍の治療を行う前には以下の検査を行った上で適切な治療を行っていきます。
- 腫瘍やリンパ節に針を刺し細胞診を行う
- 胸のレントゲン検査を行う
- 手術で切除した腫瘍の悪性度を調べるため病理検査を行う
腫瘍を手術で取り除く
他の組織に転移がない場合、また炎症性乳癌で無ければ治療の第一選択は外科的治療となります。
これは悪性乳腺腫瘍の場合でも、良性乳腺腫瘍の場合でも同じです。
手術で切除する範囲は、腫瘍の大きさや体調などの状態により決めます。
切除の範囲は、以下の三つがあります。
- しこりのある部分だけ切除
- しこりの周囲の乳腺も一緒に切除
- しこりのある側の乳腺を全て切除
良性腫瘍は早期に切除することで、経過が良好な場合が多いとされます。
しかし悪性腫瘍では、切除しても再発することもあります。そのため、再発率を下げる方法として広範囲に切除することもあります。
乳腺腫瘍の手術を行うにあたっては、先生とよく相談して行って下さい。
抗がん剤を使う
乳腺腫瘍が転移していると思われる場合に、補助治療として抗がん剤を投与することがあります。
抗がん剤の使用は、病状と健康状態に合わせて行います。
免疫療法を行う
乳腺腫瘍が転移していると思われる場合に、樹状細胞療法や活性化リンパ球療法などの免疫療法を行うことがあります。
また悪性乳腺腫瘍とわかった段階から、生活の質の維持を目的として活性化リンパ球療法を行うこともあります。
サプリメントを使ってみる
「タヒボ」と言うアマゾン川流域に自生する樹木から見つかった成分に、癌細胞の増殖を抑える効果があるとされています。
その「タヒボ」を含むサプリメントを服用してみるのも、一つの方法です。
【参考サイト】近畿大学の研究より
https://www.kindai.ac.jp/agriculture/research-and-education/collaboration/02/index.html
乳腺腫瘍の治療費
乳腺腫瘍を手術する場合には全身麻酔を必要とします。
そのため小さな1個の乳腺腫瘍でも、6〜10万円はかかると思ってくだい。
乳腺腫瘍大きくなってしまったり手術自体が大掛かりになってしまうと、それだけ治療費もかかってしまいます!
やはり症状的にも経費的にも、乳腺腫瘍の処置は早期に行うことが望まれます。
乳腺腫瘍の予防方法
早期に避妊手術を行う
避妊手術を行うことにより、乳腺腫瘍の発生率が低くなるという報告があります。
しかし避妊手術をすれば、必ず予防できるというわけではありません。
乳腺腫瘍の予防率を高めるには、避妊手術を行う時期が大切になります。
【 避妊手術を行う時期と乳腺腫瘍の発生率 】
- 初回発情前では『 0.05%』
- 2回目の発情前では「 8%」
- 2回目の発情以後では「 26%」
- 5回以上発情後では予防効果なし
一般的には、避妊手術を行うなら2回目の発情前までが良いとされています。
それでも初回発情を迎えてしまえば、発症率は8%になってしまいます。
やはり乳腺腫瘍の予防率を上げるなら、初回発情前に避妊手術を行うのが一番良いのではと思います。
体をよく触り乳腺腫瘍を見つけ出す
乳腺腫瘍の大きさは、その後の病状の経過に大きく影響するため小さなうちに見つけ出すことが重要です。
悪性の乳腺腫瘍の場合には、直径が3cmより小さい場合には治療後の経過が良いとされています。
しかし大きさが3cm以上にもなると治療の経過が悪くなり、5cm以上にもなると非常に悪いとされています。
乳腺腫瘍の多くは乳首の近くにありますが、離れた場所にあることもあります。
しかし丁寧に触ることで発見することができまので、日々の生活の中にスキンシップの時間を作り早期発見を心がけてください。
乳腺腫瘍を起こしやすい犬種
- 避妊手術を受けていない犬
- 中高齢の犬
まとめ
乳腺腫瘍は体を触るなどチェックを行うことで、早期に発見することができる腫瘍です。
また早期に避妊手術を行うことで、乳腺腫瘍を予防することもできます。
日頃から体に触ることを心がけ、もし「しこり」がみられた場合は早めにご相談ください。
一緒に一番良い方法を考え、楽しく暮せるようにお手伝いさせて頂きます!