【鉤虫症】犬の鉤虫症とは?症状や治療法を解説
2021.11.15
仔犬が下痢ピーピーで血も出ちゃってる、しかも元気も食欲も無い。
そんな症状がみられたら「お腹の中に虫」が住んでいるかもしれません。
どうにかしてやってッよ!
ウンチの検査してみようね!
信じたくなぁ〜い!
犬のお腹の中に住む寄生虫の中でも、悪さをする代表的なものが『犬鉤虫(Ancylostoma canium)』です。
この犬鉤虫は、犬だけでなくヒトにも感染します。
感染すると様々な症状を引き起こす「犬鉤虫」の原因や対処法などについて、Dr.Nyanが説明しますね。
もくじ
犬鉤虫症の症状
犬鉤虫は成虫になると小腸に寄生する、体長は1~2cmくらいの細い小さな虫です。
見た目が糸のような虫のため、寄生虫の中の線虫というグループに属します。
犬鉤虫は頭に「鈎(かぎ、こう)」のような構造を持ち、この鈎を小腸の粘膜に引っかけて血を吸いながら増えていきます。
大量に寄生した場合には小腸だけでなく、大腸の胃の方に近い部分である『結腸』にまで寄生しています。
でもどんな症状がでたら要注意なのか一緒に確認していきましょう!
下痢や血便などの消化器症状
成虫は小腸の粘膜に傷をつけるため、血がウンチに出るだけでなく下痢などの消化器症状が見られることもあります。
犬鉤虫の寄生している場所により、血便の症状が違います。
- 小腸に寄生している場合には、黒っぽいタール状便
- 結腸に寄生している場合には、赤色の血便
ただ寄生している犬鉤虫が少ない場合には出血量も少なく、ウンチに血が見えないこともあります。
しかし出血量が少なくても、出血が長い期間続くと貧血になったり栄養状態の悪化がみられるようになります。
特に仔犬では重症化しやすく、命に関わることもあります。
そのため仔犬での下痢や痩せているなどの症状が見られる場合には、注意が必要です。
混合感染による重症化
他の原虫などの寄生虫、またウイルスなどとの混合感染には注意が必要です。
犬鉤虫は、他の寄生虫などと一緒に感染していることが多々あります。
例えば、回虫やコクシジウムなどです。
これらの寄生虫との混合感染により、犬鉤虫を駆除しても症状が治らないこともあります。
またパルボウイルスやコロナウルスなど、吐き気や下痢などの消化器症状を起こすウィルスの感染にも注意します。
これらにも感染してしまった場合には
、入院での治療も必要とします。
特に仔犬では全身状態の悪化が早く、場合によっては死に至ってしまうことがあります!
犬鉤虫症の原因
犬鉤虫の卵は楕円形をしており、ウンチと一緒に出て来ますが肉眼では見えません。
そのためウンチの検査を行い、犬鉤虫の卵を見つけることで診断します。
繰り返す下痢や治らない下痢などが見られる場合には、ウンチの詳細な検査を行うことが大切です。
犬鉤虫に感染するためには、感染が可能となる幼虫の時期に起こります。
感染経路は、以下の四つがあります。
口からの感染
ウンチと一緒に出た犬鉤虫の卵は孵化して、感染力を持つ幼虫にります。
その幼虫を口にしてしまうことで感染します。
これを『経口感染』と言います。
皮膚からの感染
感染力を持つ幼虫が、皮膚から体の中に入り込み感染しまいます。
体の中に入った幼虫は血液に乗り、身体の臓器の中を巡り肺へと入ります。
そして肺から口へと移動し、飲み込まれ小腸へと寄生します。
これを『経皮感染』と言います。
妊娠中の母犬から胎仔への感染
犬鉤虫に感染した母犬の胎盤を通じて、子宮内の仔犬に感染することがあります。
これを『胎盤感染』と言います。
母犬の母乳からの感染
犬鉤虫に感染した犬が妊娠・出産すると、母乳の中に幼虫が出てきて仔犬に感染します。
この母から仔へ、乳汁を介しての感染を『経乳感染』と言います。
~Dr.Nyan ポイント~
とても怖い臓器幼虫移行症(トキソカラ症)って?
犬鉤虫は、ヒトにも感染することがあります。
このように動物からヒトへと感染してしまう病気を人獣共通感染症と言います。
犬鉤虫の宿主は本来は犬であるので、ヒトに寄生しても成虫にはなれません。
そのためヒトに感染しても、腸に寄生するのではなく肺や肝臓などの組織に寄生してしまうことがあります。
このように幼虫が様々な臓器の中に内に込み、病気を起こしてしまうのが『臓器幼虫移行症(トキソカラ症)』です。
犬鉤虫症の主な治療法と費用
他の感染症が無ければ、一般的には犬鉤虫を殺してしまえば結構治りは良いと言われています。
ただ仔犬の場合には重症化している場合も多く、駆虫以外の処置を必要とすることがあります。
無症状や軽い症状であれば駆虫薬で駆除し、もし下痢などの消化器症状があればそれに応じた対症療法で治療を行います。
また犬鉤虫の検査としてはウンチの検査以外にも、場合によっては血液検査や超音波検査などを行うことがあります。
そのため、幾度か繰り返してウンチ検査を行うことが重要になります。
駆虫薬
線虫駆除薬を使うことで、駆虫することができ、定期的に投与することで予防も可能です。
一般的には、パモ酸ピランテルを含む薬剤(ドロンタールプラス錠、バイエル)を使用します。
また線虫駆虫薬のフェンベンダゾールや、イベルメクチンを使うこともあります。
飲ませるのが難しい場合には、背中に垂らすスポットオン剤を使用します。
これにはセラメクチン(レボリューション、ゾエティス)などを使用します。
抗生剤や輸液剤の投与
嘔吐や下痢、発熱や元気・食欲の低下などの症状がみられる場合には積極的な治療が必要になります。
また症状によっては、抗生剤や輸液剤などを使用した積極的な治療を行います。
輸血
慢性的な感染や大量に寄生していると、重度の貧血にもなるため輸血を行います。
また低タンパク血症や低アルブミン血症を起こしている場合にも、輸血が必要になることもあります。
貧血は重度の感染を起こした仔犬に特徴的な症状で、そのままの状態にしておくと死に至ってしまうこともあります。
治療費
感染の度合いや使用する薬、治療期間の違いから治療費が変わります。
体重にもよりますが、ウンチの検査と駆虫剤の内服タイプの投薬で治療費は4,000円くらいです。
しかし混合感染や併発症などで重度の消化器障害にまでなっている場合には、治療期間も長く治療費もかかってしまいます!
犬鉤虫症の予防方法
散歩に注意する
犬鉤虫の卵を口にする機会が多いのは、屋外に出た時です。
その中でも、散歩の際が一番多いと考えらえます。
またドッグランなど、犬が多く集まる場所にも注意が必要です。
ウンチは持ち帰るようにして下さいね!
清掃の徹底
ウンチの中の犬鉤虫の卵が感染力を持つには、ある程度の時間がかかります。
そのためウンチをしたら、すぐに処理すると感染のリスクは低くなります。
また散歩の時にウンチしたら、地面に埋めることは犬鉤虫卵で環境を汚染してしまうことになります。
感染のリスクを減らすためにも、ウンチは持ち帰りましょう!
定期的に検便を行う
新たに犬を迎えた際には、ウンチ検査を行います。
特に仔犬は母子感染の可能性があるため、必ずウンチ検査が必要です。
予防的投薬を行う
ウンチの検便で犬鉤虫の卵が見つからなくても、感染を疑う場合には予防的な駆虫を行います。
予防的な投薬は、犬鉤虫の感染リスクを減らします。
~Dr.Nyan ポイント~
犬鉤虫は再感染し続ける?!
犬鉤虫の中には小腸に寄生せず、腸以外の体の組織の中に隠れ住んでしまうものがいます。
これらの犬鉤虫が感染源となり、小腸への寄生が持続的になってしまうのです。
そのため腸内の犬鉤虫を駆除しても、再感染したかのような状態が続いてしまいます。
この再感染は数か月~数年にも及ぶこともあるため、予防的駆虫を行う必要があります。
日ごろからウンチをチェック
犬鉤虫が寄生してないかなど、日々ウンチの状態に気をつけておきます。
新しい子を迎え入れる場合には、あらかじめウンチの健康状態を確認しておきます。
犬鉤虫症になりやすい犬種
- 散歩時に草むらに入るのが好きな犬
まとめ
犬の鉤虫症は仔犬で多くみられます。
また犬鉤虫は、ヒトにも感染することが知られています。
しかし気をつければ予防もできるし、再発も防げるのが寄生虫です。
気になる症状が見られたりしたら、早めにご相談くださいね!
安心して暮らせるよう、お手伝いをいたします!