【僧帽弁閉鎖不全症】犬の僧帽弁閉鎖不全症とは?症状や治療法を解説
2022.09.12
飼い主さんにとって怖いこと、それは「症状がよくわからず、しかも気が付いたら病状が進んでしまっていた」そんな病気です。
このようなことが起こりうる病気の1つに「僧帽弁閉鎖不全症」があります。
この「僧帽弁閉鎖不全症」は、心臓の弁の一つである『僧帽弁』が正常に働かないことから起こります。
しかも最悪の場合には心不全を引き起こしてしまう、怖い病気です。
発症すると怖い「僧帽弁閉鎖不全症」の原因や対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明します
じゃ〜早めに見つけて治療すれば、長生きできるってことね!
僧帽弁についてチョット説明しましょうね
心臓には三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁という、四つの弁があります。
そしてそれぞれの弁が、血液の流れを上手にコントロールしています。
「僧帽弁」は、左心房から左心室の間にある弁です。
この弁は肺から届いた酸素の豊富な血液を全身に送り出す際に、重要な働きをしています。
「僧帽弁」は、血液が流れるときに左心房から左心室に向かってしか開きません。
そのため血液は、左心房から左心室に流れます。
つまり、血液は常に一方方向に流れるようになっています。
そのため健康であれば、左心室に入った血液は左心房に戻ってこられません。
ちなみ「僧帽弁」という名前の由来は・・・
「弁の形がカトリックの司教がかぶる帽子の形に似ている」ことからなんですよ~
もくじ
僧帽弁閉鎖不全症の症状
【初期症状】無症状で経過
僧帽弁閉鎖不全症は初期では無症状なことも多いため、気がつかないこともあります。
【主な初期症状】
- 無症状
- 心雑音が聞こえる
- 心拍数が増える
初期の段階で無症状なのは「血液の流れる量」に理由があります。
僧帽弁にトラブルが起こると、弁としての働きが悪くなり心臓の中の血液に逆流が発生します。
逆流を起きると、血液が正常に流れません。
つまり、心臓から送り出される血液の量が減ってしまうと言うことになります。
そこで心臓は、もっと血液を全身に流そうと心拍数を増やし一生懸命に頑張ります。
その結果、体の中を流れる血液の量が増えていきます。
このように初期では血液が逆流を起こしていても、体全体に血液が十分に流れている状態なのです。
そのため不調が見られないか、不調があってもわかりづらいと言えます。
【中期症状】様々な症状が出てくる
無症状であった初期の状態から、咳が出るなど徐々に症状が見られるような状態へとなっていきます。
【中期症状】
- 散歩に行きたがらない
- 坂道の上り下りで息切れを起こす
- 食欲が落ちる
- 運動後や興奮すると咳をする
- 安静時の呼吸数が増えてくる
血液を送り出すのに頑張っていた心臓は、徐々に疲れていきます。
そして血液を送り出す力も、徐々に弱まっていきます。
心臓が疲れ送り出せなかった血液は心臓の中に溜まり、心臓は膨らんでしまいます。
その結果、心臓に溜まった血液は肺へと逆流してしまいます。
また、肺の毛細血管の中にも血液が溜まりだしてしまいます。
【末期症状】肺水腫や心不全を繰り返す
末期になると、肺水腫や心不全を起こしてしまい体を動かすのも辛い状態となります。
【末期症状】
- ほとんど動こうとしない
- 安静にしていても咳が出る
- 浅くて早い呼吸をする
- 激しく咳込みピンク色の痰を出す
- 突然パタンと倒れる
- 唇や舌などの粘膜が紫色になる
- 呼吸困難となる
肺の毛細血管の中に溜まった血液が増えると、毛細血管は血液でパンパンになってしまいます。
そうなると、血液の中の水分が肺の組織の中にまで溢れ出てくるようになります。
その結果、呼吸をするときに空気の入る肺胞と言う部分にも水分が溜まりだしてしまいます。
この状態になる、肺は酸素がうまく取り込めなくなってしまいます。
また体の中に溜まった二酸化炭素も肺から放出できず、増えてしまいます。
いわゆる、これが「肺水腫」です。
また心臓が体に必要な血液を送り出せなくなってしまう「心不全」にもなってしまいます。
肺水腫も心不全も、命にかかわる危険な状態です。
そしたら肺の中を流れる血液も増えてしまうのね。
しかし心臓からの逆流もあるので肺の中の血液が思うように流れないので、
肺のうっ血が強まり呼吸が辛くなってしまうからなんだよ!
腎臓の働きにも大きな影響が出る場合があるよ!
最悪は腎不全になることもあるから、心臓の病気は早期発見が大事なんだよ。
僧帽弁閉鎖不全症の原因
高齢化
老化に伴い、僧帽弁は変形していきます。
当然ながら老化を防ぐことはできません。
#この後にご紹介する予防方法も合わせて、ご確認ください。
粘液腫様変性
最も一般的な僧帽弁閉鎖不全症を起こす原因は、僧帽弁の粘液腫様変性と言われています。
粘液腫様変性が起こると弁が分厚く、短く、いびつな形へとなります。
弁が変形してしまうことにより、弁の動きが悪くなってしまいます。
遺伝的な問題
キング・チャールズ・スパニエルなどの犬種に見られます。
腱索の断裂
心臓の中の血液が一方向に流れるようにするため、僧帽弁は片方にしか開かないようになっています。
この働きをしているのが、弁に付いている「腱索(けんさく)」と呼ばれるパラシュートの紐のような靭帯です。
この「腱索」が、なんらかの理由で伸びてしまうことがあります。
そうなると弁がうまく閉じなくなり、血液が一定の方向にうまく流れず血液が逆流してしまいます。
また腱索が切れてしまうと、逆流する血液の量が一気に増えてしまいます。
その結果、血液の流れが悪くなり急激に症状が悪化してしまいます。
歯周病菌
僧帽弁閉鎖不全症を起こした犬の僧帽弁には、歯周病菌が住んでいることがあります。
しかも僧帽弁の歯周病菌の数は、歯周病が悪化しているほど多くなると言われています。
つまり歯周病菌は体の中に入ると心臓の弁に住み、弁膜症を発症させるだけでなく症状までも悪化もさせてしまいます!
このように口の中の環境の悪化が、心臓の弁にまで影響しています。
歯周病菌毒素検査:歯周病の検査について
僧帽弁閉鎖不全症の主な治療法
【初期症状】進行状況を確認する
基本的には、心臓の拡大が見られなければ投薬は行いません。
最低でも半年に1回、心臓の超音波検査やレントゲン検査を行う事をお勧めします!
【中期症状】治療を開始する
食事療法と投薬を始めます。
- フード:ナトリウムを制限した心臓病食
- 高圧剤:血管を拡張させて血圧を下げ、血液を循環しやすくする
- 強心薬:心不全の症状を軽くする
僧帽閉鎖不全症では、急に症状が悪化する場合があります。
その場合には入院し、投薬や酸素療法など集中治療を行うことが必要になります。
症状に改善が認められても、薬は継続して服用していくことがとても大切です。
また定期的に心臓と腎臓の検査を行なったり、日々の状態を日記につけ記録しておくことも必要です。
【末期症状】積極的な治療をする
投薬しても症状が不安定なため、その状況に応じた治療を行います。
- 酸素吸入:呼吸を楽にする
- 利尿剤:心臓の負担を減らし、肺に溜まっている水分を取く
- 強心薬:全身の血液の流れを改善し肺水腫を軽くする
心臓の手術を行う場合もありますが、手術は限られた施設でのみの行われる高度な治療です。
ご希望の場合にはご紹介致します!
僧帽弁閉鎖不全症の予防方法
しかし定期的なチェックで早期発見することができます。
歯周病を予防する
歯周菌は傷ついた歯肉から血管の中に入り込み、血液にのって心臓へと運ばれていきます。
そして歯周菌がたどり着いた心臓の弁に、病気を発症させてしまいします。
歯周病の予防には、歯周病の初期の症状である歯肉炎の早期発見と治療です。
ま丁寧な歯磨きを行います。
食餌療法
症状を悪化させないためには、フードに含まれるナトリウムの量に気を付けることが大切と言われています。
ナトリウムを制限は、水分が体内に溜まることで起こる鬱血などの状態を改善することができます。
これはナトリウムを制限することにより、血圧や心臓の負担を改善することができるからです。
ただナトリウムが制限されているフードは、犬にとっては美味しいとは思えないらしく食べないことがあります。
そのため、食べさせる工夫が必要になることもあります。
どうしても食べない場合には、高齢期用や腎臓病用の療法食を使うこともあります。
心臓病用のフードの開始の目安は、中期症状からが良いとされています!
適度な運動と筋肉量の維持
下半身の筋肉は、伸縮することでポンプのような働きをします。
そのため心臓へと血流を送り返す大切な働きをしています。
ふくらはぎを「第2の心臓」と呼ぶ理由は、ここにあります。
つまり第2の心臓(下半身の筋肉)が衰えると血液の流れ悪くなり、さらに心臓病が悪化してしまいます。
そのためバランスの良い食フードを摂り適度な運動を行い、筋肉量の多い体を作っておくことが重要です。
定期的な健康診断を受ける
心臓病は、早期発見と早期治療が大切です。
しかも心臓病になると腎臓の機能も悪化しやすくなります。
そのため心臓だけではなく、腎臓の検査も受けておくことが必要です!
心臓の病気にかかると腎臓にも影響がでる理由
心臓の機能が落ちると、血液の流れが悪くなります。
その結果、心臓は頑張って血液の流れをよくしようとします。
その結果、血圧が上がり動脈の血管の壁が硬くなってしまいます。
同時に腎臓の血管も硬くなり、腎臓に流れる血液の量が減り腎臓の機能が落ちてしまいます。
腎臓の機能が落ちると、赤血球を作るホルモンの分泌量が減り貧血になっていきます。
貧血になると酸素不足となり、腎臓の状態をさらに悪化させてしまいます。
その結果、慢性腎不全の状態に陥ってしまうこともあります。
僧帽弁閉鎖不全症になりやすい犬種
- 中高齢の小型犬
- キング・チャールズ・スパニエル
- マルチーズ
- ポメラニアン
- プードル
まとめ
老齢犬に最も多い心臓病のひとつが「僧帽弁閉鎖不全症」です。
そのため症状が出ても「年だから」と思われがちで、発見が遅れることも多い病気です。
もし心不全を発症してしまうと、半数が1年以内に亡くなってしまいます。
当院では早期発見はもちろんのこと重症でも楽しく暮らせるよう、スタッフ一同お手伝いさせて頂きます。
治療内容や費用等、ご不明なことはご相談は下さい!