お母さんのいない仔猫の育て方 ① 保護したときに
どうしたらよいでしょう?
動物病院には、このような相談がたくさん来ます。
中には眼も開いていない、生まれて数日といった仔猫が保護される場合もあります。
こんな問いに、おそらく多くの動物病院ではそれをお断りしているのではないでしょうか。
なぜなら悲しいことですが、そうやって連れてこられる仔猫の全てを引き取って育てることは不可能だからです。
だからこのような場合には、保護してくださった方に子育てをしていただくようにお願いするしかないのです。
このままじゃ死んじゃう!!
見つけちゃったからにはほっておけない〜!!!
実際に捨てられている仔猫を見つけてしまった時は、何も考えず拾ってしまいます。
しかも、その後の子育てや里親探しのことまで冷静に考えてまで拾う人は少ないと思います。
現実は保護したからには育てて里子に出すまで、あるいは自分で飼うなど責任を持ってやらなくてはなりません。
でも大変と言っては¥いても、基本的には子育ては楽しいものだと思います。
ミルクをごくごく飲んで日に日にぷっくり大きくなっていく。
そんな姿を見ていると、どんな人だって自然と頬がゆるんでしまうのではないでしょうか。
そもそも赤ちゃんの仕草は可愛いいですよね。
しかも、見ていて飽きません!
子育てを成功させるポイントで一番大切なことは「子育てをする人が楽む」ことだと思います。
赤ちゃんの成長の度合いの様子
生まれたばかりの赤ちゃんが、どのように成長し大きくなっていくのか!
このことをきちんと知っておくことが、子育てを行う上でとても重要なことなんです。
このコラムの中には、成長の度合いを示す上での参考としての数値が紹介されています。
この数値はあくまでも目安であって、実際にそぐわない場合もあります。
ここでは生みの母に代わり、育ての母になれるようDr.Nyanが皆様のお役に立てるよう説明していきますね!
体重の変化について
猫の赤ちゃんの生まれたときの体重は、だいたい100g前後です。
体重の変化としては、生まれて2〜3日は少しだけ体重が減少することがあります。
これは生まれてすぐはウンチやオシッコ、また皮膚など体から排泄される水分の量がミルクを飲む量よりも多いためです。
これはヒトの赤ちゃんにも見られる「生理的体重減少」というものです。
この期間は元気にミルクを飲んでいて、他に異常が認められなければ特に心配はいりません。
その後には、どんどん体重が増えて日に日にムクムクと体が大きくなっていくことでしょう!
そして体重は1日に7〜10gづつくらい増え、約2週間で2倍になります。
多少の個体差はありますが、問題なくミルクを飲んで健康に育っている場合の目安です。
保護した赤ちゃんに栄養障害があったり病気を持っていたりすると、思ったように体重が増えません。
その場合には、原因を探さなくてはなりません。
そして、その原因に対して対処・治療を行う必要があります!
また哺乳瓶の吸い付きが悪い場合には、シリンジを使ったりなどしての授乳が必要になります。
哺乳瓶やシリンジを使うにあたり、仔猫の飲み方のよっては顔がミルクで汚れてしまうことがあります。
その際には、授乳後に顔をきれいにしておいてあげて下さいね!
もしミルク汚れにより鼻が詰まってしまうと、息をするのが辛くなってしまいます。
また顎の毛の汚れにも注意して下さいね!
体温の変化について
生まれて初めの1週間は、体温は34~35°Cしかありません。
成猫の体温は38~39°Cなので、それと比べると とても低いように感じます。
しかしこれは正常なので、問題はありません。
そして生後1〜2週くらいからは、徐々に体温は上がります。
しかし、2週間くらいまでは自分で体温を調節することができません。
そのため、保温をしてあげる必要があります。
本来この時期には、母猫や一緒に生まれた兄弟と一緒に過ごすことが大切なのです。
実際には猫の赤ちゃんは、兄弟みんなでくっついていますよね?
そして「だんご」状態になって眠っています。
この「だんご」になっている状態で、互いに温め合っているんです。
そのため自分で体温調節ができなくても、まったく大丈夫なのです。
だからこそ母猫や一緒に生まれた兄弟のいない赤ちゃんの場合は、保温がとっても大切なのです。
実は・・・
生まれたばかりの赤ちゃんには、生まれつき自然に頭の近くの温かいものに近寄っていく本能が備わっています。
これを「哺乳反射」と言い、母猫のオッパイを見つけやすくするものです。
この反射のおかげで、赤ちゃんは母や兄弟たちとくっついていられるのです。
そして、4週齢になるころには体温は38°Cに近づきます。
視覚・聴覚の発達について
猫の赤ちゃんは、生まれたばかりのときは眼も耳も開いていません。
眼はおおよそ、生後5〜14日で開いてきます。
おなじように耳の穴も、生後5日ぐらいから開いきます。
しかし眼が開いたとしても、しばらくはちゃんとは見えてはいません。
ただ眼を守るための反射能力は、眼が開く前からちゃんと備わっています。
そのため眩しいときに瞬きをしますし、何かが瞼(まぶた)に触れたときには瞼を閉じます。
眼や耳が刺激にちゃんと反応を示すようになるのは、だいたい25日齢くらいだと言われています。
このころから、世話をしてくれる人や周りにいる動物などを覚えるようになってきます。
きちんと眼が見え耳が聞こえるようになってくるのは、だいたい3〜4週齢です。
ちなみ・・・
開いたばかりのときの眼の色は「青い色」をしています。
その青い眼も4〜6週齢までには、成猫と同じ色に変わってしまうのです。
筋肉・神経の発達について
生まれてすぐの猫の赤ちゃんは、いつも丸まった形で寝ています。
これはお腹の筋肉(屈筋)の方が、体を伸ばす背中の筋肉(伸筋)よりも強く働いているためなんです。
しかし生後4日齢を過ぎると、背中の筋肉(伸筋)の縮む力も強くなってきます。
そのため背筋を伸ばしたり、横向きやうつ伏せができるようになります。
そして7〜14日齢くらいで、ハイハイをはじめます。
自分の体を支えることができるようになるのは、だいたい2週間が過ぎるころです。
そのころになると、よちよちと少しずつ歩き始めます。
そして21日齢くらいなると、かなりちゃんと歩けるようになります。
よく生まれた時は、まだ痛みは感じないと言うかたもいます。
でも、それは大きな間違いですよ!
生まれた時から「痛みの感覚」は、ちゃんと備わっています。
しかし生後7日齢くらいまでは、痛みを感じたとき見られる反射はあまり見られません。
そのため痛みを感じても、大きな声で鳴いたり体をピクピク動かす程度の反応しか見られません。
痛くても、痛みの表現をしない時期なのです!
痛くないのと、痛くても痛みから逃れられないのは大きく違いますよね!
痛みから逃げられないのは、だいたい2週齢くらいまでです。
それを過ぎると、痛みから逃げようとする努力が見られるようになります。
排尿と排便の反射について
猫の赤ちゃんは、生まれてしばらくは自分でオシッコやウンチをすることができません。
そのためオシッコやウンチをさせるには、陰部や肛門に刺激が必要となります。
この反射は、自然界ではとても理にかなったものなのです。
赤ちゃんのオシッコやウンチのニオイは、敵の肉食動物をひきつける格好の材料になってしまいます。
そのため母猫は赤ちゃんの陰部や肛門をなめて刺激し、出たオシッコやウンチを即食べてしまうのです。
このようにして、オシッコやウンチのニオイが残らないようにして敵から守っているのです。
赤ちゃんは、だいたい3週齢くらいまでにはオシッコやウンチを自分でできるようになります。
陰部や肛門を刺激されてオシッコやウンチをする反射が無くなるなるのは、4〜5週齢頃です。
そのころにはオスでもメスでも、しゃがんで排泄するようになります。