お母さんのいない仔猫の育て方 ② 検査のしかた
保護した仔猫を里子に出すにしても自分で飼うにしても、健康に育ってほしいものです。
そのためんいは生まれたばかりの赤ちゃんが、どのように成長し大きくなっていくのか!
どのようなことに気をつけたら良いのかを知っておくことが、とても重要なことなんです。
このコラムの中には、成長の度合いを示す上での参考としての数値が紹介されています。
この数値はあくまでも目安であって、実際にそぐわない場合もあります。
ここでは生みの母に代わり、育ての母になれるようDr.Nyanが皆様のお役に立てるよう説明していきますね!
身体検査のしかたでの注意事項
なにか病気を持っていないか!
栄養の状態をチェックしてみましょうね!
動物病院では、どのような環境で世話をしどのように食餌をあたえたらよいかをアドバイスしてくれます。
また何か病気を持っていれば、早い時点で治療を始めることができます。
健康状態を確認したら、あとはお家で毎日健康チェックを行ってあげて下さい。
そしてそのポイントをご紹介しましょうね!
身体検査は温かいところで行いましょう
生まれたばかりの仔猫は、まだ自分で体温調節ができません。
そのため気温が低いところや冷たい台の上にのせると、体温が下がってしまいます。
身体検査は温かなところで行いましょう。
身体検査のときには、体に触れる手は温めておくことも忘れないようにしましょう。
個体識別のための目印をつけましょう
複数頭いるときは、それぞれの仔の健康状態や発育状態を把握するために、確実に個体識別をしておくことが必要です。
色や柄が全く違っている兄弟の場合は、その特徴を目印にすればよいでしょう。
色や柄で区別がつかないときは、なにか識別できるものを付ける必要があります。
例えば、毛糸やリボンなどで色違いの使い捨ての首輪をつくります。
この時、他の兄弟たちがかじったりひっぱったりして飲み込んでしまわないように注意してください。
また、赤ちゃんはどんどん大きくなります。
そのため成長にあわせて、首に巻いたリボンなどは大きいものに替えていきましょう。
決して無理はしないようにしましょう
身体検査は、その仔の状態をみながら慎重に行います。
特に衰弱していたり覇気が無いなど、ぐったりしているようなときは注意です!
触られたり動かされたりするのは、とっても負担になることがあります。
そのようなときは、最低限の検査だけ行います。
そして保温や糖の補給、酸素吸入など行い体力が回復するのを待ちます。
食欲も元気も十分あって活発に動いているような仔でも、長時間触るのはダメです!
やはり負担になるし、体力も消耗してしまうことがあります。
身体検査は「ポイントをしぼって、すばやく正確に!」行うことが大事です。
身体検査のしかた
外から見ての様子をチェック
猫の赤ちゃんは「ぷっくり」としているのが普通です。
外から見て肋骨が出ていたり「おなかがぺっしゃんこ」ではいけません。
このような場合、栄養の状態が悪いか病気になっているなど何らかの不調があることを示しています。
また赤ちゃんの体は、乾いているのがふつうです。
目や鼻、口のまわり、またお腹や肛門、陰部のまわりなどが濡れていたり汚れているのは異常のサインです。
触ってみて・・・
健康な赤ちゃんはヒトの手で触らたり持ち上げらたりすると鳴いたり動いたり、何らかの反応を示します。
具合の悪い赤ちゃんは反応が悪く、あまり動きません。
体重の測定
1日当たりの体重の増加は7〜10gだよ!
体重測定は家でもっとも簡単にできて、仔猫の健康状態を教えてくれる検査です。
少なくとも生後3週齢くらいまでは毎日体重測定を行いましょう。
動きが活発になってくると、体重測定中にハカリから落ちてしまうことがあります。
注意して下さいね!
例えば朝起きてオシッコやウンチをすませた後など、時間を決めて毎日同じ状態で体重を測ります
3週齢以降は、測定に間隔をあけても構いません。
体重が減ったり増えが悪いのは『栄養が足りていない』か、『体に何らかの異常』があるサインです。
体温の測定
【猫の赤ちゃんの正常な体温の目安】
- 1週齢 35.5~36.0°C
- 2週齢 36.0~36.5°C
- 3週齢 36.5~37.0°C
- 4週齢 37.0~38.0°C
赤ちゃんが元気に育っているなら、体温を毎日は測る必要はありません。
しかし触った感じで、体が冷えてないか熱くないかは気にかけてあげて下さい。
正確に体温を測るには、体温計を使用しなくてはなりません。
動物病院では、肛門に体温計の先を入れ直腸の温度を測ります。
家庭で直腸で体温を測る場合には、十分に注意して行なって下さいね!
体温計の先に潤滑剤を塗って、直腸内に深く入れます。
このときに肛門きちんと開いているか、見て下さい!
生まれたばかりの赤ちゃんには、時々見られる奇形に鎖肛(肛門が開いていない)があります。
鎖肛ではウンチが出ませんので、手術を行わないと赤ちゃんは生きていられません。
また肛門はちゃんとあっても、直腸がきちんと開通していないこともあります。
この場合にもウンチが出ませんので、手術が必要になります。
目の検査
赤ちゃんの眼が開くのは生後5日以降で、遅くとも14日までには完全に開くと言われています。
眼が開いたら、毎日次の点をチェックしてあげてください
・結膜が赤くないか
・目全体が腫れぼったくなっていないか
・涙や眼ヤニが出ていないか
本当はもう眼が開いているはずなのに、眼ヤニで瞼がくっついてしまって開いていないように見えることがあります。
このように眼ヤニや腫れがひどい場合には、眼の病気や全身性の伝染病にかかっていることもあります。
そのような場合には、動物病院へ連れて行って下さいね!
病院では涙の出かたや眼の傷、睫毛の生え方に問題はないかなどについて詳しく調べます。
耳の検査
そして生後約17日で、完全に開きます!
もし耳が開いていない場合は、先天的な異常と考えられます。
耳もお家で毎日チェックしてあげましょう。
正常な耳の中はきれいなうすいピンク色です。
もちろん耳垢などはほとんどみられません。
もし耳の中に黄色や褐色、黒色の耳垢が見られたり、耳の中が赤く腫れているようなら外耳炎を起こしている可能性があります
外耳炎の原因には、細菌や真菌、耳ダニなどにによるものがあります。
このような場合には、耳垢をとって顕微鏡で見て調べます。
外耳炎は早いうちに処置しないと、慢性化し治りにくくなってしまいます。
耳ダニの場合は伝播力が強いので、先住猫や同居犬に伝染ってしまうことがあります。
耳の中は、よく見ればわかりますので注意しておきましょうね!
口の中の検査と見られる病気
口の中の検査では、歯の生え方や先天的な奇形、口内炎や舌炎、歯肉炎などがないかを調べます。
【歯の生え方】
仔猫は生まれた時には、歯が生えていません。
歯の生え方はヒトと同じで、初めは乳歯が生え次第に永久歯に生えかわります。
誕生日がわからない場合には歯の生え方で、だいたい生まれてどれくらいになるのかを知ることができます。
仔猫では初めの乳歯が生えてくるのは2〜3週齢で8週齢までに生え揃います。
永久歯が生えてくるのは3〜6ヶ月齢の間です。
【乳歯と永久歯の生える目安】
乳歯 | 永久歯 | ||
切歯 第1 | 2〜3週齢 | 切歯 第1 | 3.5〜4ヶ月齢 |
第2 | 2〜3週齢 | 第2 | 3.5〜4ヶ月齢 |
第2 | 3〜4週齢 | 第3 | 4〜4.5ヶ月齢 |
犬歯 | 3〜4週齢 | 犬歯 | 5ヶ月齢 |
前臼歯 第2 | 8週齢 | 前臼歯 第2 | 4.5〜5ヶ月齢 |
第3 | 4〜5週齢 | 第3 | 5〜6ヶ月齢 |
第4 | 4〜6週齢 | 第4 | 5〜6ヶ月齢 |
後臼歯 第1 | 4〜5ヶ月齢 |
口を大きく開けて中の状態もチェックしておくことも忘れないでね
【口蓋裂】
口に中に比較的多く見られる奇形の一つに、口蓋裂(こうがいれつ)というものがあります。
これは口と鼻のしきりが、きちんとできていないものです。
そのため口を開けてみると、上顎にポッカリと穴が開いているのが見られます。
つまり、口と鼻が常につながった状態になっていることになります。
そのため、ミルクが上手く飲めずに鼻から吹き出したり誤嚥してむせたりします。
6週齢を過ぎれば手術も可能になりますが、その前に栄養失調や誤嚥性の肺炎で亡くなってしまうこともあります。
口蓋裂を持った赤ちゃんは、お母さんの乳首や哺乳ビンからうまくミルクが飲めません。
そのような赤ちゃんには、チューブで直接胃の中にミルクを入れてあげる方法をとります。
【口内炎】
口内炎で一番怖いのが、ウイルス感染によるものです。
この場合の症状は口内炎のみにとどまらず、呼吸器症状や消化器症状などの全身症状が出て死に至るケースがあります。
また仔猫の口内炎の原因で多いのが、異物によるものです。
この時期の何んにでも口に入れてみようとします。
そのため、それで傷をつけて感染し口内炎になってしまうことがあります。
呼吸状態の評価
呼吸状態を評価するためには、呼吸数はどうか、規則正しい呼吸をしているか、呼吸困難の様子がないかなどを調べます。
呼吸数は1分間あたり15~30回くらいが正常です。
口を開けてハアハアと息をするのは、呼吸が苦しいサインです。
成猫と違い体の小さな仔猫では、呼吸により肺に出入りする空気がとても少ないです。
そのため聴診器で肺や気道の異常な音を聴き取るのは、とても大変になります。
循環状態の評価
【粘膜の色】
眼や口の中などの粘膜の色を見て、白っぽくなっていたり紫色になっていたりしないかを調べます。
粘膜が白っぽくなっているようなら、貧血が疑われます。
栄養不足のこともあるし、おなかの中に寄生虫がいることもあります。
そのため血液検査やウンチの検査などが必要になります。
粘膜が紫色になるのはチアノーゼといって、体の中の酸素が足りていないことを示しています。
心臓や肺の病気が疑われますので、詳しい検査が必要です。
【心血管系の異常】
心血管系の異常を発見するためにまず行うのが、聴診です。
聴診では、心拍数と心雑音の有無を確認します。
仔猫の心拍は成猫に比べるととても速く、生後4週齢までの平均心拍数は約250回/分です。
仔猫で聴かれる心雑音には、2つのタイプがあります。
機能性心雑音
心臓の病気とは無関係に起こり、3ヶ月齢くらいまでには消えてしまいます。
心奇形に関連した心雑音 3ヶ月齢を超えても消えません。
心雑音が聴かれたときにこのどちらのタイプなのかを知るためには、雑音の聴かれる部位や音の質、粘膜の色調や全身状態などを総合的に評価します。
心電図や超音波検査などの精密検査が必要になることもあります。
脱水の評価
長い時間食べたり飲んだりしていなかったり、下痢や嘔吐が続くと脱水状態になってしまいます。
仔猫の脱水状態を知るには、成猫のように背中の皮膚をつまみ弾力性を見て判断することはできません。
そのため仔猫の脱水状態の評価には、眼や口の乾燥の状態、また体重の減少やオシッコの色調などで行う必要があります。
オシッコの色は、オシッコをさせるときに観察しましょう。
脱水を起こしていないときもオシッコは、水のような無色か極うすい黄色です。
もし濃い黄色や金色などの場合には、脱水している可能性があります。
異常を見つけたらすぐ動物病院へ
仔猫の病気は進行が早く、前の日までは元気でミルクも飲んでいたのに、翌日には急激に悪化し死んでしまった。
そのようなことが、少なくありません。
また伝染病に感染しているなどの場合には、早めに治療しないと手遅れになってしまうことがとても多いです。
お家での健康チェックで異常と思ったら、すぐに先生に相談するようにしましょう。
お母さんのいない仔猫の育て方の実践編
どのような環境で仔育てを始めるかについてのお話です!
まず病気を持っていないことが確認できるまでは
完全隔離をすることです!
保護した仔猫で一番心配なことは、病気を持っているかわからないということです。
中にはこわい伝染病や寄生虫に感染している、そのような場合もあります。
特に問題になるのが、お家に先住猫がいる場合です。
保護して直ぐに
「うちの仔とご対面〜!」
これは絶対に行ってはダメです。
新しくお家に来た仔から、ウイルス性の伝染病やお腹の虫や皮膚病などを感染してしまうなんてことが少なくありません。
感染するような病気が無いことが確認できるまでは、先住猫のと関わりは避けるようにしましょう。
また保護猫と先住猫とが接触しなくても、飼い主さんの手や衣服を介して感染させてしまうような病気もあります。
赤ちゃんを触ったら必ず手を洗い、できれば消毒するようにしましょう。
とにかく保温が大事!
生まれたばかりの赤ちゃんは、自分で体温の調節ができません。
そのため、保温してあげなければいけませんよ!
【環境温度のめやす】
- 1〜5日齢 32°C以上
- 6〜10日齢 30°C以上
- 11日齢以上 22~25°C
温度計は赤ちゃんの近くに置いて下さいね!
【保温グッズいろいろ】
・ペット用ヒーター
ペットショップやホームセンターなどで、手に入ります。
注意するのは、直接赤ちゃんの肌に触れないようにタオルや毛布などで覆うことです。
もし低温やけどを起こしてしまったら、可哀想ですもんね!
またケージの中には、ヒーターを敷いていない場所をつくることが重要です。
このようにすれば、赤ちゃんは暑ければヒーターの無い場所に、寒ければヒーターのある場所に自分で移動することができます。
・湯たんぽ
湯たんぽは、布などでくるんで使用します。
もし湯たんぽがなければ、ペットボトルや空きビンなどにお湯を入れたものでもOKです。
ただ当然時間がたってくると冷めてくるので、こまめにお湯を入れ替える必要があります。
冷めたまま放っておくと、逆に体温を奪ってしまうことになるので要注意です。
・赤外線ライト
赤ちゃんの「斜め上」から照らします。 吊す高さを変えることでも、温度調節ができるので便利です。
斜め上から照らすのは、ケージの中に温度差を作りたいからです。 赤ちゃんは暑ければライトから遠ざかり、寒ければラートに近い場所に自分で移動することができます。
生まれたばかりの赤ちゃんの水分要求量は成猫の約2倍と言われています。
また生まれたばかりの赤ちゃんの皮膚には、体の水分の約4分の1が存在しているとも言われています。
本来なら母猫が赤ちゃんの体を舐め、体の表面を湿った状態に保っています。
そのため、皮膚からの水分の蒸散と乾燥が防がれています。
保護猫を育てるときは体が乾燥しないように、環境湿度に気をつけておかなければなりません。
できれば近くに加湿器などをおいて、湿度を55~60%くらいに保つのが理想的です。
水分が不足すると、赤ちゃんは容易に脱水症状を起こしてしまいます。
また、乾燥しすぎは呼吸器系に悪影響を与えることもあります。
【もっとも経済的な仔育てばこ】
用意する物
1ダンボール、2新聞紙、3湯たんぽ、4毛布・タオルなど、5ペット、6バスタオル
1ダンボール
結構保温効果があります。
立ち上がったとき、に赤ちゃんが出られない高さ
にします。
2 新聞紙
下からの冷えを防ぐために厚めに敷きます。
3 湯たんぽペットボトルにお湯をいれ、新聞紙でまいた後、おいます。
(このようにすると冷めにくくなります。)
こまめにお湯をとりかえるのを忘れずに。
4 毛布・タオル
湯たんぽと高さをあわせるのがポイントです。
素材は洗濯に強く、塩素消毒できるものがよいでしょう。
ループ状のタオルは爪が引っかかって、思わぬ事につながることがありますので要注意です。
5 ペットシーツ
汚れたらすぐ取りかえられて便利です。
6 バスタオル
寒いときはダンボールの上からかけて熱が逃げないようにします。2