【子宮蓄膿症】犬の子宮蓄膿症とは?症状や治療法を解説
2022.09.03
水をよく飲むようになって、お腹周りが太ってきた感じがする。
そんな症状がみられたら「子宮にトラブル」を引き起こしているかもしれません。
最近水をいっぱい飲んで、オシッコもいっぱい出るようになって‥‥
しかもお腹も妙に大きくなってきた感じがするの。
そんなに食べてないのに、太ってきちゃったのかしら??
どうにかして〜ッ!
子宮のトラブルだね、一番に考えられるのは子宮蓄膿症だね!
検査の結果は、お腹の腫れの原因は大きくなった子宮でした。
子宮蓄膿症とは『子宮の中に膿が溜まる』病気です。
子宮蓄膿症は病変に気づきやすい病気で、しかも予防できる病気とも言われます。
しかし「避妊手術を受けていても、発症する可能性はゼロではない」病気です!
ここでは『子宮蓄膿症』の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。
※当記事は犬の症例写真を参考画像として載せています。苦手な方はお控え頂くか、十分注意してご覧ください。
もくじ
子宮蓄膿症の症状
子宮蓄膿症は、一般的には避妊手術をしていない老齢の雌犬にみられます。
また多くの場合、発情終了後から1ヶ月から2ヶ月前後に発症します。
子宮蓄膿症は、陰部から膿などのオリモノの出かたにより二つに分けられています。
- オリモノが出ている開放性子蓄膿症
- オリモノが全く見られない閉塞性子宮蓄膿症
水をいっぱい飲んでオシッコをいっぱいする
子宮蓄膿症になると、水をいっぱい飲んでオシッコをいっぱいするようになります。
この症状を「多飲多尿」と言います。
多飲多尿を起こしてしまう原因は、子宮の中で増えた細菌の出す毒素です。
この毒素により腎臓の機能に障害を起こしてしまい「多飲多尿」となってしまうのです。
つまり子宮蓄膿症の原因となっている細菌の出す毒素により腎臓の機能にトラブルが起こる、そんな怖い病気なのです。
太ったように感じる
子宮の中の膿が増えると、子宮が大きくなってしまいます。
そのため、まるで妊娠したかのようにお腹周りが大きくなったよう見えてしまいます。
また妊娠とは思わず、太ったと勘違いしてしまうこともあります。
オリモノが出る
開放性子蓄膿症の場合には、子宮の入口(頚管)が開いており子宮内に溜まっている膿などが体の外に出てきます。
そのため、陰部の周りや後ろ足の毛が膿で汚れてしまいます。
また歩くたびに、ポタポタと膿が落ちてくることもあります。
膿は白色く甘酒のような感じのモノから、血が混じったようなモノまで様々です。
閉塞性子宮蓄膿症の場合は子宮の入り口が閉じているため、膿が落ちてくることはありません。
そのため気がつきにくく、重症化してしまうことも多々あります。
熱が出てぐったりしている
子宮蓄膿症の進行すると、熱が出たりぐったりすることがあります。
子宮蓄膿症で怖いのが、敗血症と子宮の破裂です。
敗血症とは感染症をきっかけに、あらゆる体内の臓器が機能不全になる病気です。
敗血症になると、子宮の中の細菌が全身に回ってしまっているので発熱やだるさが症状としてでてきます。
最悪の場合、死に至ってしまうこともあります。
子宮が大きくなりすぎると耐えきれず、お腹の中で破けてしまうこともあります。
子宮が破けてしまうと、子宮の中の細菌がお腹の中に広がります。
また子宮が破裂しないまでも、子宮に小さな穴が開き膿が漏れ出てしまうこともあります。
こちらも治療が遅れると、死に至る可能性があります。
子宮蓄膿症の原因
じゃ原因について詳しく説明するね!
卵巣からのホルモンの影響
発情後に卵巣から分泌されるホルモンは、子宮の内膜に様々な変化を起こさせます。
この変化は受精卵を着床させやすくするものなのですが、その反面感染を起こさせやすくもしてしまいます。
子宮の変化には以下のようなものがあります。
- 子宮内膜を厚く水々しくする
- 子宮の出入り口である子宮頚管を閉じる
- 受精卵の着床を助けるため免疫力を下げる
卵巣の機能障害や腫瘍などから、ホルモンの分泌が異常となることがあります。
そのような場合には以下のような症状が見られますので、注意が必要です。
- 発情期間がいつもよりも長い
- 発情周期が不規則である
- 久しぶりに発情し出血も見られる
特に卵巣に腫瘍が発症した場合には、子宮蓄膿症が多く見られます!
子宮内への細菌の感染
健康であれば子宮内に入り込んでしまった大腸菌やブドウ球菌などの細菌は、自然に排除されてしまいます。
しかしホルモンの作用で子宮頚管が閉じてしまうと、子宮内の細菌は排除せれずに溜まり、細菌感染を引き起こします。
また発情後期は受精卵の着床を高めるため、子宮の免疫力が下がっています。
そのため感染に対する防御力も低くなり、子宮内は細菌が増殖しやすい状態になっています。
子宮蓄膿症の主な治療法と費用
血液検査やレントゲン検査、超音波検査で子宮の状態を確認し、治療方法を決めます。
手術で子宮を摘出する外科的治療法
卵巣と子宮を切除するのが一般的な方法です。
特に膿が出てこない頸管閉鎖型子宮蓄膿症の場合には、できるだけ早く手術することが重要となります。
子宮蓄膿症を発症した場合、腎臓や肝臓の障害など様々な合併症を生じていることが多々あります。
そのため手術も、リスクが高いものとなります。
また腎臓や肝臓の障害が、手術後に腎炎や肝炎として表面化してくることもあります。
つまり子宮蓄膿症は手術すれば終わりではなく、手術後も治療を続ける必要がある病気なのです。
また治療のかいなく、亡くなってしまう場合もあります。
投薬などの内科的治療法
手術を行うには、全身の状態が悪すぎることもあります。
そのような場合には投薬などの内科的な治療を行い、状態の一時的な回復を待ち手術を行うこともあります。
また子宮の摘出手術を望まない場合にも、同様に内科的な治療を行うこともあります。
内科的治療としては、膿を排泄させる処置として子宮を収縮させるために薬や抗生物質の投与や輸液を行います。
ちなみ子宮を収縮させる処置は、膿が出てる場合にのみ行います。
内科的治療後、回復しても次回の発情後に再発することがあります。
そのため治療後も気を抜かず、引き続き経過を観察していきます。
また全身の状態が良いのであれば、子宮を手術で摘出することを考えることも必要と思います。
子宮蓄膿症の治療費
子宮蓄膿症にかかってしまった場合、どのくらいの治療費がかかるのでしょうか?
子宮摘出手術だから、やることは普通の避妊手術と同じだろうと思われる方もいるかと思います。
しかし内容が全く違います。
普通に行う避妊手術は、健康状態が良好な時に行われます。
しかし子宮蓄膿症の手術は、健康の状態の悪い状態で行います。
最悪は、腎炎や肝炎などの合併症を伴う中での手術となってしまうこともあります。
費用は合併症が起こらない場合でも、10万円を超えてしまいます。
合併症を伴うようになると、さらに高額になってします。
やはり症状的にも経費的にも、避妊手術は早期に行うことが望まれます。
子宮蓄膿症の予防方法
子宮蓄膿症は、犬の病気の中でも多い病気とされています。
避妊手術を受ける
子宮蓄膿症の発症予防は、避妊手術をすることです。
また避妊手術は発情時期のストレスも減らすだけでなく、乳腺腫瘍の発症予防にもなります。
ちなみ避妊手術を受けていても、子宮の一部が残っている場合があります。
その場合には「断端子宮蓄膿症」として発症することがあります。
避妊手術を望まない飼い主さんは「早期発見を心がける」
妊娠出産を望んでいる場合や、避妊手術のリスクを心配し手術を望まないこともあると思います。
現状では、子宮蓄膿症の絶対的な予防方法はありません。
そのため子宮蓄膿症をなるべく早期の段階で発見し治療を行うことが、併発症の発症と重症化への予防となります。
子宮蓄膿症の発症しやすい時期には、特に初期症状に十分に気をつけ下さい!
子宮蓄膿症を起こしやすい犬種
- 5歳以上の犬
- 避妊手術を受けていない犬
- 出産経験がない高齢犬
まとめ
子宮蓄膿症は全身的な合併症を起こしやすく、しかも命も奪われやすい病気です。
しかし避妊手術で、予防ができる病気でもありす。
もし全身麻酔や手術の内容などで、気になることがありましたらご相談ください。
当院では痛くない手術を心がけています!