【膿胸】猫の膿胸とは?症状や治療法を解説
2021.12.22
息苦しそうにしていて胸が痛がる、そんな症状がみられたら「膿胸(のうきょう)」かもしれません。
風邪が治ったと思ったら今度は息苦しい感じで、食欲が出な〜い!
なんだろう?
重症化しやすい病気だから、一緒に頑張って治そう。
膿胸とは胸の中の「胸膜」に何らかの理由で感染が広がり、「胸腔」に膿の混じった液体が溜まる病気です。
また『胸腔』とは、その膜の間にある空間のことを指すんだよ!
胸の中に溜まった膿が肺を圧迫するため、空気が入る空間が狭くなり息苦しくなります。
膿胸は犬猫ともに発生しますが、一般的には猫に多いように思います。
ここでは『猫の膿胸』の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。
もくじ
膿胸の症状
猫膿胸の特徴的な症状は、息をするのが辛そうなことです!
症状が進むと呼吸困難になり、最悪は死に至ることもあります。
【初期症状】はっきりとした症状はあらわれない
膿胸の初期症状は特徴的な症状が現れません。
そのため飼い主さんは、猫の異常に気付けないことが多い病気です。
- 食欲が落ちる
- 元気が無い
- 熱が出る
膿胸の初期はハッキリした症状が現れないため、早期発見がしづらい病気です。
そのため、病状が進行してから気がつく事がほとんどです。
【中期症状】息が荒くなり苦しそうにする
膿胸は症状が現れるまでに、数週間の時間がかかります。
その間に胸の中の膿の量が徐々に増え、病状が進行し元気や食欲が減り息も徐々に荒くなっていきます。
溜まった膿の量により以下のような症状も見られるようになります。
- 痩せる
- 咳をする
- 脱水症状
下は、膿胸を起こしてしまった胸のレントゲン写真です。
胸の中に膿が溜まった部分は白く、また肺が小さく黒く写っています。
健康な肺は肋骨に囲まれる部分まで大きく広がって、黒く写っています。
重症化する前のこの段階の状態のときに治療が始まればよいのですが、遅れて重症化してしまうと治療が長引いてしまいます。
その場合には、ICUなどでの集中的な治療が必要になってしまいます。
【末期症状】呼吸が浅く早くなりあえぐようになる
重度になると呼吸は浅く早く呼吸が辛そうに「あえぐ」ようにもなり、少し動くだけでも苦しがります。
末期になると以下のような症状が見られるようになります。
- 息が荒く早い
- 息をするのが辛そう
- 口を開けて息をしている
- 舌の色が紫色のなってしまう
- 呼吸困難
- ぐったりして脱力状態である
胸に痛みが出てくるため、体に触られるのを嫌がります。
また横になると胸が圧迫され呼吸が苦しくなりため、少しでも楽に呼吸するために首を伸ばし頭を上げ座った姿勢を取り続けます。
横向きに寝ることも、出来なくなります。
症状が進むと細菌が血液の中で増えてしまう敗血症を起こし、ショックや多臓器不全を起こし亡くなってしまうこともあります。
膿胸の原因
続いては膿胸の原因について紹介していきます。
膿胸は発症や感染経路などの原因が、ハッキリわからない病気と言われています。
喧嘩やケガなどの外傷
喧嘩やケガなどの外傷が原因で、胸腔に細菌が増え膿が溜まることがあります。
胸の奥まで達するような傷の場合は特に注意が必要です。
また、交通事故や高いところからの落ちたことにより、発症することもあります。
猫風邪(上部気道感染症)などから
感染症から肺炎を起こし、膿が溜まることもあります。
- 猫風邪(猫ヘルペスウイルス感染症、猫カリシウイルス感染症など)
- 細菌性肺炎
- 猫白血病ウイルス感染症
- 猫FIV
- 胸膜炎
などの病気になった際は気を付けましょう。
また猫風邪に感染してると思われる場合には、その原因を知るためにPCR検査を行うこともあります。
そのような場合には検体を採取し、検査センターに検査依頼することもあります。
誤飲・誤食
誤飲・誤食が原因で膿が溜まってしまうこともあります。
特に先の尖ったものを誤って飲み込んでしまった時は要注意。
誤食が原因で食道に穴が開き肺炎を起こし、膿が溜まることがあります。
肺以外の場所の感染症の影響
肺以外の場所に細菌感染症があり、その細菌が血液に乗り胸の中に入り込み発症してしまうこともあります。
例えば、口内炎や歯周病などです。
膿胸の主な治療法と費用
膿胸は、とても息苦しい病気です。
治療を安全に行うために血液検査や超音波検査、細菌培養や感受性試験など詳細な検査を行う必要があります。
猫の中には、怒りっぽい猫や呼吸の状態がとても悪い猫もいます。
そのような場合には、鎮静剤を使ったり酸素吸入を行い状態を見ながら検査を行う必要があります。
治療の基本は酸素吸入と、胸の中に溜まった膿を抜くことです。
しかし膿胸を治療して治っても、良好な経過が得られるのは約50%〜80%と言われます。
また再発もしてしまう病気ですので、治療は注意して行うことが重要になります。
酸素吸入を行う
膿胸は肺の中に空気が入らないため、とても息が苦しい状態が続いています。
しかも息苦しい状態が長いと、全身の臓器や組織に十分な酸素が届かなってしまっています。
このような低酸素の状態の時に、処置などで緊張させると簡単にショックを起こしてしまうことがあります。
不慮の事故を防ぐためにも十分のに酸素吸入を行い、呼吸を楽にしてあげることが重要になります。
また場合よっては酸素吸入の際にリラックスできるよう、鎮静剤を使うこともあります。
胸の中から膿を抜く
胸の中の膿を取り除くために、胸に針を刺し膿を吸い出します。
しかし胸の中の膿がドロドロで濃い場合には、針を使って膿を吸い出すことは難しくなります。
このような場合には、胸の中にチューブを設置して膿を吸い出します。
また胸の中を洗浄液などで洗浄処置を繰り返し行い、胸の中を綺麗にします。
設置したチューブは、胸の膿が綺麗になるまで付けておく必要があります。
その場合には家での管理が難しいので、入院が必要になります。
抗生物質などを投与
膿胸の原因となっている細菌に対して、抗生物質を投与します。
また脱水などの症状が現れていれば、輸液を行います。
洗浄を行い、また抗生剤の効果がみられると結構治りが良く膿の量も減り呼吸も楽になります。
しかし肺炎や気管支炎を併発している場合は、症状が長引いてしまうこともあります。
膿胸の治療費
治療をする上でしっかりとした原因を知る必要があるため、重度であればあるほど治療は高額となってしまいます。
また重症になれば入院期間も長くなってしまい、治療費は高額になりがちです。
やはり症状的にも経費的にも、早期発見が大切です。
猫膿胸の予防方法
屋内飼育の徹底
膿胸を起こす原因には、外傷や細菌感染が関係しているといわれています。
そのため屋外に出さないようにし、感染症にかかるリスクやケンカの機会を減らすことが大切です。
またケンカをしないよう、雄猫は去勢手術をしておくことも必要です。
混合ワクチンを打つ
膿胸の原因に、猫風邪があります。
猫風邪の中には、ワクチンをしておけば重症化が防げるものもあります。
そのため混合ワクチン接種をしておくことが大切です。
しかしワクチンを接種していても、感染を完全には防ぐことができないのでご注意ください。
ワクチンは感染しても、重症化しにくくさせるものです。
日頃から様子を見ておく
呼吸が早いなどの異常を、早く見つけ出せば重症化を防げます。
そのためにも、日頃から健康状態を意識し確認してあげましょう!
初期の段階で膿胸を見つけ出し治療することができます。
呼吸数については、正常な呼吸数はだいたい1分間に20~40回ぐらいですので参考にしてください。
開口呼吸や座った姿勢のままで横にならないというのも、呼吸困難と判断するための重要なポイントになります。
猫膿胸を起こしやすい猫種
上記であげた予防方法をぜひ実践してあげてください。
- 屋外に出てしまう猫
- 同居猫がいる猫
- 去勢していない雄
- 猫 ワクチン接種していない猫
まとめ
膿胸は早期発見と早期治療で、重症化させないことが大切です。
元気や食欲、疲れやすい呼吸が変など、何か気になる兆候が見られたら、早めにご相談ください!
猫の最高長寿は38年、長生きさせてあげましょうね。