【甲状腺機能低下症】犬の甲状腺機能低下症とは?症状や治療法を解説
2021.11.16
歳をとった感じで、なんだか老け込んだようになって寝てばかりで怠けものみたい。
そのような一見、犬の病気のサインとは考えにくいような症状が現れる病気が「甲状腺機能低下症」です。
老化なんでしょうか??
血液検査してみようね。
これって犬のホルモンの病気では多い病気ですよね!
「甲状腺機能低下症」は高齢の犬に多い病気です。
そのため「甲状腺機能低下症」を調べるため、シニア犬では血液検査を行うことが勧められます。
ちなみ猫では「甲状腺機能亢進症」がよく見られます。
ここでは『犬の甲状腺機能低下症』の原因と対処法などについて、Dr.Nyanがわかりやすく説明いたします。
もくじ
甲状腺機能低下症はどんな症状?
甲状腺はヒトで言う「のどぼとけ」のすぐ下の左右に1対あり「全身の細胞の代謝をつかさどる甲状腺ホルモン」を分泌しています。
甲状腺機能低下症になると「甲状腺」の機能が「低下」、つまり甲状腺ホルモンの分泌量が少なくなり代謝が落ちてしまいます。
甲状腺機能低下症の症状は、老化による症状にに良く似ており「年をとったな〜」と思ってしまう飼い主さんが少なくありません。
そのため初期症状が見逃されてしまう、これが甲状腺機能低下症の大きな特徴です!
見た目や動きに変化が見られる
「大人しく、静かで、よく寝てる!」
そのような症状が見られることが多いのが、甲状腺機能低下症です。
見た目や動きの変化には、以下のようなものがあります。
- 顔が腫れぼったく悲しげな顔
- 元気が無い
- すぐ疲れる
- よく寝ているのか刺激を与えないと起きない
- 寒さに弱い
- 食べる量が変わらないのに太る
皮膚に変化が見られる
甲状腺機能低下症になると、皮膚の新陳代謝が悪くなるため皮膚に様々な症状が見られるようになります。
- 痒みを伴わない体の対称性脱毛
- 尻尾の毛が薄くなる(ラットテイル)
- 皮膚が黒っぽくなる
- 膿皮症にかかりやすくなる
- 再発を繰り返す
- 皮膚炎の治療が長引いたり、治療に反応しない
また、甲状腺ホルモンは心臓などの内臓の働きや、自律神経を刺激し体温を調節も行っています。
そのため甲状腺ホルモンの分泌量が落ちると、それらの調節が異常になってしまいます。
体内の変化には以下のようなものがあります。
- 心臓の動きが悪くなり心拍数が減る
- 不整脈が見られる
- 体温が下がる
神経的な変化が見られる
ヒトでは物忘れや手足の感覚が鈍くなるなどの症状が見られますが、犬では以下のような症状が見られます。
- けいれんなどの発作
- 頭が横に傾く(斜頸)
- うまく動けなない
- 顔に麻痺が出る
- ぐるぐる同じ場所を一方向に回る(旋回)
- 足を引きずるようにする(跛行)
~Dr.Nyan ポイント~
甲状腺機能低下症が進むとおこる「静かな死」
ここまで紹介した症状は、いずれも甲状腺機能低下症に特有な症状ではありません。
他の病気でも見られる症状のため、見逃されがちになってしまいます。
そのため治療をせずに放置しておくと、進行するにつれ体力が落ち老化が早くなってしまいます!
そして末期を迎えると、静かな死を迎えてしまいます。
これが甲状腺機能低下症が『静かなる安楽死』と言われている理由です。
甲状腺機能低下症の原因は?
それでは一緒に原因を確認していきましょう
甲状腺ホルモンは、脳から分泌されるホルモンにより甲状腺ホルモンの分泌がコントロールされています。
そのため甲状腺の機能が正常でも、甲状腺機能低下症の症状が見られることがあります。
甲状腺機能低下症を起こす原因は、以下の3種類があります。
甲状腺そのものの機能が落ちている場合
甲状腺炎や免疫の影響、甲状腺腫瘍、また原因がよく分からない甲状腺の萎縮などがあります。
犬の場合では、ほとんどがこのタイプと言われています。
脳下垂体に異常がある場合
甲状腺ホルモンの分泌量の調節は、脳下垂体から分泌されている『甲状腺刺激ホルモン(TSH)』によります。
そのため甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌量が少なくなると、甲状腺の機能は正常でも甲状腺ホルモンの分泌量が減ってしまいます。
視床下部に異常がある場合
甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌量の調節は、脳の視床下部から分泌されている『甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)』によります。
そのため甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の分泌量が少なくなると、甲状腺の機能は正常でも甲状腺ホルモンの分泌量が減ってしまいます。
甲状腺機能低下症の治療法と費用
甲状腺機能低下症は発症していても、その症状がハッキリと見えません。
そのため、体の裏に隠れている病気とも言えます。
そのため治療を行う前に、
- 一般的な血液検査
- 甲状腺ホルモンである『サイロキシン(T4)』の検査
の2種類を行います。
~Dr.Nyan ポイント~
見かけ上、甲状腺ホルモン値が低くなる?!甲状腺機能正常症候群(Euthyroid Sick Syndrome)とは?
全身に影響するような病気などがあると、甲状腺機能には問題が無くても見かけ上甲状腺ホルモン値が低くなる状態のことがあります。
原因には感染症や循環器疾患、貧血や腫瘍、糖尿病などの病気があります。
またステイロイド剤などの使用でも、サイロキシン(T4)値が低くなることがあります。
数値が低い場合は、詳細な甲状腺関連ホルモンの検査を行い原因特定をおこないます。
これらの原因が取り除かれば、サイロキシン(T4)は正常な値に戻ります。
一般的には、飲み薬による『内科的治療』を行います。
飲み薬による内科的治療
犬の甲状腺機能低下症では、不足している甲状腺ホルモンを補充する治療を行います。
そのため、甲状腺ホルモンを飲ませまる内科的な治療がメインになります。
一般的には、投薬から数週間で改善する症状もあります。
しかし、場合によっては数か月も要することもあります。
治療を始め1ヶ月を経過したころに、血液中の甲状腺ホルモンの量を再度検査します。
甲状腺を摘出する手術を行う外科的治療
甲状腺腫瘍が原因で甲状腺機能低下症を起こしている場合には、外科的治療が行われます。
甲状腺を摘出しても治るわけではありません。
元々が甲状腺ホルモンの分泌量が少ないわけですし、甲状腺を摘出してしまっています。
そのため、甲状腺ホルモンの薬を一生涯飲む内科的な治療が必要になります。
外科的治療を行う場合には、麻酔のことや手術後のケアなどについ先生と良く相談しましょう。
甲状腺の外科的治療が必要となる場合には、専門病院を紹介しています。
甲状腺機能低下症の治療は一生続く
一般的には、甲状腺機能低下症は自然に治る病気ではありません。
そのため、一生治療を続ける必要があります。
治療を始めると、徐々に効果が目にみえるようになります。
まず元気が出て動きも良くなり、若返ったように感じます。
また太った体も、元の体重に戻ります。
少し時間がかかりますが、毛が抜けた部分にも毛が生えてきます。
これは若返ったのではなく、今の年齢に戻っただけなんです。
それだけ老けて見えていたんでしょうね!
治療に必要な薬の量は、その犬により違います。
また同じ犬でも、血液中のホルモンの量は時間の経過とともに変化します。
そのため、治療を始めたら血液中の甲状腺ホルモンの量の検査を定期的に行います。
例えば3ヶ月ごとに甲状腺ホルモンの量を調べ、投薬量の調整を行う必要があります。
少ないと効果は出ないよね。
もし多いと「甲状腺機能亢進症」を引き起こしちゃいます!
~Dr.Nyan ポイント~
甲状腺ホルモンの飲み過ぎで起こる「甲状腺機能亢進症」
血液中の甲状腺ホルモン濃度が上がり過ぎると、以下のような変化が見られます!
- 活動的になり落ち着きがなくなる
- 怒りっぽくなる
- 興奮しやすく時には凶暴になる
- 大きな声で叫んだり変な声で鳴く
- 水をいっぱい飲みオシッコをいっぱいする
- すごく食べるのに痩せてくる
甲状腺機能低下症の治療費は?
甲状腺機能低下症は隠れた病気のため、重症化する前に見つけ出すことが大切です。
甲状腺ホルモンの検査は採血料を含め6000〜8000円、飲み薬は体重や症状により違いますが、一か月分で3000〜5000円くらいでしょうか。
生涯治療が必要となりますが、治療が安定している場合には健康な犬と変わらない生活ができます!
甲状腺機能低下症の予防方法
甲状腺機能低下症の予防方法はありません。
早期発見のため健康診断をする
甲状腺機能低下症の初期症状は気づきにくく、また少し病状が進んでも分かりやすい症状が現れるとも限りません。
そのため定期的な健康診断を行うことが、予防につながります。
動きや皮膚の状態をチェックする
日頃から、犬の行動や皮膚の状態などのチェックを行ないます。
そして上記の【症状】に書いてあるような症状が見られたなら早めにご相談ください。
甲状腺機能低下症を起こしやすい犬種
- 老齢の犬
- 中型の犬
- 大型の犬
まとめ
甲状腺機能低下症は症状だけではわかりにくく、また診断もできません。
しかし健康診断を行い治療すれば、健康な時と変わらない生活ができます。
もし何か気になる症状や、投薬中の体調等で気になることがある場合はご相談ください。
健康に楽しく過ごせる生活を、スタッフ一同でお手伝いいたします!